ポイントは「持ちやすさ」を重視するかどうか

 重量に次いで、サイズについてはどうでしょうか。ここで注意したいのは、小型スマホを求めるユーザの中には、とにかく軽さを重視するがゆえに小型モデルを求めているだけで、画面サイズにはそれほどこだわりがない人と、持ちやすさを優先するため、画面幅がスリムなものを求める人の2タイプに分かれるということです。

 前者の場合、軽量でさえあれば、むしろ画面サイズは大きいほうが見やすくてよいわけで、画面サイズの割に軽い本製品は、またとない選択肢と言っても過言ではありません。

 一方で、後者の持ちやすさを優先する人にとっては、本製品の横幅は標準サイズのiPhoneよりも大きいことから、ニーズからは外れています。片手で握りやすく、また持ち替えることなく画面の端まで指が届くから、という理由で小型スマホを待望している人にとっては、どれだけ軽かろうが薄かろうが、意味がないというわけです。

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iPhone Airの表面積は一般的なスマホよりもむしろ広め。持ちやすさ優先で小型モデルを選ぶユーザにとって、ニーズから外れた製品と言えます
厚みの比較。iPhone Air(下)の厚みは5.6ミリと、iPhone 13 mini(上)の厚み7.65ミリと比べても圧倒的に薄いのですが、小型スマホを求めるユーザにどれだけの訴求力があるかは疑問です
iPhone Air(左)とiPhone 13 mini(右)を横に並べてみました

薄型化・軽量化のために削られた機能もあるが……

 iPhone Airは、軽さや薄さ、さらにサイズ感とは別に、一般的なiPhoneの多くが備えている機能の一部が削られていることに注意が必要です。

 まずひとつはカメラです。本製品のカメラはシングル仕様で、言うなればかつてのiPhone SE(第3世代)や、現行モデルではiPhone 16eと同等です。

iPhone Air(左)が搭載するのは広角レンズのみ。望遠レンズはもちろん、iPhone 13 mini(右)ですら搭載している超広角レンズも省かれています

 Appleは、デジタルによる望遠に強みがあり、専用の望遠レンズがなくても支障がないことをアピールしていますが、手元側が広く写る超広角レンズも省かれているのは、かなり致命的です。

iPhone Airで撮影した写真。左から広角、2倍、デジタル10倍。遠くの被写体をアップで撮る場合には有用ですが、超広角がないため建物の周囲まで含めて写すことができません
iPhone 13 miniで撮影した写真。左から超広角、広角、デジタル5倍。望遠回りは弱点ですが、建物の周囲も超広角レンズでバッチリ写ります。背後に下がって撮影できない時には極めて有効です

 もともと超広角レンズのない製品からの乗り換えならまだしも、超広角レンズを搭載しているiPhone 13 miniなどからの乗り換えでは、実質的にダウングレードとなってしまいます。

iPhone Airで撮影した写真。3つのぬいぐるみを並べたところを至近距離から撮影していますが、きちんと収まるのは中央だけです
iPhone 13 miniで撮影した写真。ほぼ同じ距離で撮影していますが、こちらは3つのぬいぐるみすべてが写ります

 もうひとつはバッテリー容量で、同時発売のiPhone 17がビデオ再生で最大30時間も駆動するのに対してiPhone Airでは最大27時間と約1割減。発表直後には多くのメディアやユーザから、ツッコミが入っていました。ボディを軽く薄くするために、スマホの生命線であるバッテリーを削るとは何事か、というわけです。

 とはいえ、あくまでiPhone 17シリーズと比べたら短いだけで、今回の比較対象であるiPhone 13 miniは最大17時間、iPhone SE(第3世代)では最大15時間なので、従来の小型モデルから乗り換える場合はそこまで気にならないでしょう。長年使ってバッテリーが劣化しているのなら、なおさらです。

 この他にもスピーカーがモノラルなど、ちょくちょく削られている機能はあるのですが、総じて「カメラだけは要注意」というのが筆者の結論です。バッテリーはモバイルバッテリーを追加してしのぐことができますが、カメラのレンズはこうした方法で追加できないからです。もう一つ挙げるならば、物理SIM非対応でeSIMのみであることも、注意すべきポイントといったところでしょうか。