「面接とかも苦労しました」就職活動で苦戦し、内定が出た会社は1社だけ
――「仕事なんてしたくない」という思いは、就職活動が近づくにつれて変化しましたか?
岡本 いや、働くことに対しては全くポジティブに考えてなかったですね。遊んでいるほうが絶対に楽しいし、「お金持ちだったら全然働かないのにな」と思ってました。
もちろん仕事にはやりがいとかもあるだろうけど、そのやりがいをマイナスにできるくらい、働くのはしんどいものだと思っていたんです。
でも働かなきゃ生きていけないから、就活中は憧れていたキャリアウーマンを目指せる文系の職種を受けていました。
――どんな企業を受けていたのでしょうか。
岡本 大学生に人気の大手企業はだいたい受けましたね。でも内定が出たのは、新卒で入社して10年間勤めていた外資系の投資銀行1社だけでした。
外資系に受かる人は、優秀で何社も内定をもらっている、というイメージがあると思うんですけど、私はそんなことはなくて。面接とかも苦労しました。
もともと人とコミュニケーションを取るのが苦手で、気を遣う人間関係にストレスを感じるタイプなんです。
グループワークで「詩菜さんは、1人で働いた方がいいと思う」と言われ…
――就活中はコミュニケーション能力を試される場面が多いですよね。
岡本 あるメガベンチャーのインターンでグループワークをした時、同じチームの人から「詩菜さんは、1人で働いた方がいいと思う」と言われてしまって。
その人とは仲良くなったし、悪気があって言ったわけではないと思うんですけど。でもあの時に、私は周りとコミュニケーションを密にとって、協力して1つのことを成し遂げるのが苦手だなって実感しましたね。
――「働きたくない」という思いがある中で、なぜ外資系の投資銀行を受けようと思ったのでしょう。どちらかというと多忙な業界というイメージですが。
岡本 あえて志望理由をつけるとしたら、外資系の仕事は、チームというよりも個人で戦っているイメージがあったからです。
個人主義、実力主義で、成果も責任もすべて自分に返ってくるから、結果を出せば給与という形でフィードバックしてくれるけど、ダメだったらクビになる。
そういう環境のほうがシンプルでわかりやすいし、人とコミュニケーションを取るのが苦手で、競争が好きな自分には向いているのかもしれない、と思いました。
――内定が決まった時の心境はどうでしたか?
岡本 嬉しいけれど嬉しくない、みたいな感じでしたね。基本はやっぱり働きたくないので。
就活が終わって同じ業界の内定者同士で集まったりすると、「仕事のやりがい」とかキラキラしたことを話す人がいるじゃないですか。私はそういう人を冷めた目で見ながら、「仕事なんて絶対楽しいだけじゃないのに……」と思ってました。
撮影=志水隆/文藝春秋
〈つづく〉
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