離婚の理由は…

 離婚の一番の理由は翔吾に「好きな人ができた」からだった。また、翔吾が20代と若く「もっと遊びたかった」のもあった。

 失踪から5年以上経っていた。翔吾は地元の友達に連絡をとってみた。すると「●●は捕まったから地元にはいない」「もう東京に来ても大丈夫」などの情報が入ってくる。

 借金がなくなり、敵もいないのであれば、逃亡する理由はない。それに最悪の場合、この場所に帰ってくればなんとかなる。翔吾は都内に遊びに行ってみた。そのうち、終電で都内に行き、朝方に帰るのが習慣となった。

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「結婚してるからいつかは自分のもとに帰ってくるだろう」

 妻はそう思っていた。だが、翔吾は想像以上にダメな男だった。酒を飲んで遊ぶだけでなく、またもや薬に手を出していた。

 しかも翔吾は自分で覚せい剤を使うだけでなく、元半グレ組織の人間からドラッグを仕入れ、客に売る売人にもなっていたのだ。まとめて買ってくれる客をつかむと、遊ぶお金には困らなかった。

 ウワサでは、翔吾が薬を仕入れていた男は、組織と揉め、原因不明の事故で亡くなったという……。

 離婚は大変だった。翔吾は離婚の意思を示すが、妻は首を縦に振らない。そのうち妻の両親の知るところとなり「家を出て行け」と言われ、翔吾は東京に戻った。離婚問題はこじれにこじれ、家庭裁判所が入ることでようやく解決した。

写真はイメージ ©getty

 翔吾を離婚にまで追い込んだ「好きな人」との恋愛は成就しなかった。ただ付き合っていた女性に向精神薬を仕入れてもらい、その薬をキャバクラのボーイなど水商売関係に流すビジネスをしていた。建築系の資格も取得していたので、仕事も始めた。

 一度バツがついたが、まだ20代後半。もう一度人生をやり直せるはずだった。