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脳の密度が低下する?「ゲーム依存」は本当に「病気」なのか

今の時代、子どもからゲームを取り上げるのは「無理ゲー」です。

2018/07/24

「脳」の密度が低くなる?

 私も以前、ゲーム依存について取材をしましたが、日本で初めて「インターネット依存外来」を設けた国立病院機構久里浜医療センターに訪れる患者の多くが、オンラインゲームにはまった男子中高生でした(「『SNSうつ』に気をつけろ!」週刊文春2017年6月22日号)。当時、樋口進院長は、長時間画面を見続けることで、視力の低下、頭痛、めまい、吐き気、肩こり、腱鞘炎などの症状を訴えるだけでなく、体を動かさず、食事をカップ麺などだけで済ませるようになるため、筋力や骨密度が極端に落ちる人がいる、と指摘していました。

 さらに、睡眠障害やうつ病に陥る人も多く、勉強や仕事ができなくなるため、経済的な問題が生じたり家庭が崩壊したりする人も──ゲーム障害に陥ると心身ともに健康を損なうだけでなく、周囲を巻き込んでみんなを不幸にしてしまう、そんな深刻な問題が起こりうるのです。

 その取材の中で、親として私も「怖いな」と思ったのが脳への影響です。たとえば、上海交通大学医学院仁済医院の研究者が2011年に報告した論文によると、ネット依存のある18人の青年と、同年齢の15人を比較したところ、前者で脳の一部に密度の低くなっていた部分があったそうです(Eur J Radiol. 2011 Jul;79(1):92-5.)

 また同じ年、中国西安大学ライフサイエンス研究センターの研究者がネット依存者18人を調べたところ、ネット依存の期間が長ければ長いほど、脳の一部の密度が低くなっていたと報告しています(PLoS One. 2011;6(6):e20708.)

※画像はイメージ ©iStock.com

ギャンブル依存や薬物依存との「共通点」

 専門家によると中国に限らず諸外国では、ネット依存によって脳細胞に影響が出ていることを示唆する研究結果がいくつも報告されているそうです。とくに影響を受けているのが、感情や感覚、欲望などに関係する部分で、オンラインゲームを一日中していると、「興奮してドーパミンなどの脳内物質がたくさん出過ぎてバランスが崩れ、脳細胞が正常に働かなくなると考えられる」とのことでした。

 また、ネット依存で脳に起こる現象は、ギャンブル依存や薬物依存などと共通しているという指摘もあります。依存症の人の脳を調べると、前頭前野という部分の機能が落ちているそうです。この部分は快感を得たいという欲求を抑える役割をしているのですが、その機能が落ちるために、ギャンブルや薬物、ゲームを途中でやめるというブレーキが利かなくなるのです。

 一方で、快感がずっと続くとその感覚が鈍って、楽しいと感じにくくなります。そのため、余計に刺激の高いギャンブルや薬、ゲームを求めてしまうのです。

 ネット依存者は、感情のコントロールができない、思考能力が低下する、攻撃的になる、無感情・無感動になる、いつもイライラする、といった状態になりやすいと言われています。それらが脳の構造的な変化にともなうものかどうかはまだ詳しくはわかりませんが、とても軽視できる話ではありません。