地域振興に新たな活路を
運航を担っているのは、広島県側が尾道~瀬戸田間の定期航路などを運営している瀬戸内クルージング、愛媛県側が道の駅の運営や来島海峡遊覧船の運航などを行っているしまなみという事業者だ。
いずれも自転車をそのまま載せることのできるサイクルシップを保有しており、生口島の瀬戸田港か大三島の井口港でふたつの船を乗り継ぐことになる。
2日間乗り放題で、尾道から今治まで全区間を利用する場合は5000円。どの区間を何度乗っても料金は変わらない。
瀬戸内クルージングの藤井瑠夏代表は、次のように話す。
「最近は今治まで自転車で行って、船に乗って帰ってくるという方もいます。ただ、それだとどうしても地元の生活航路になりますから、島から島へと乗り継いでいくことが前提のダイヤじゃないんです。
それが楽しい、という人もいますが、便利かというとなんともいえないところ。今回の航路ではそうしたケースでも利用して頂ければ」
実は、瀬戸内海の離島航路は近年厳しい状態が続いているという。
しまなみ海道で結ばれている、つまり本土と道路で繋がっている島々はまだしも、完全な離島は人口減少が顕著だ。それが離島航路の経営難にも直結し、事業者の減少が続く。まさに悪循環の只中にあるといっていい。
運航を続けている事業者も、多くが補助金に頼って青息吐息。なかなか事業者同士で連携して観光利用を促進しようという動きには繋がりにくい。
「でも、だからこそ私は瀬戸内の、しまなみ海道というエリア全体の面でお客さんを受け入れていければいいなと。各事業者が連携して、さらに船だけでなく地域の人たちや自治体も。
広島に来る人って、大阪や京都を拠点にして新幹線を使って日帰りで、というケースも多いんです。でも、面で受け入れることでもう少しこの地域に滞在して貰えるようになったらな、と思っています」(藤井代表)
瀬戸内クルージング単独ではなく、愛媛県側の運航をしまなみが担う2事業者2船の乗り継ぎという仕組みにした理由のひとつにも、そうした背景があるという。
後から声をかけられた形のしまなみはどうか。専務取締役の村上雄大さんは言う。
「実はサイクルシップは2021年に就航していて。ただそのときはちょうどコロナ禍で、なかなか稼働していなかった。そうした事情もあり、尾道とつなぐことの魅力も考えてぜひにと協力させて貰いました」
両者の間に立って、事業全体を調整しているのは実はJR西日本。しかし、しまなみ海道の島々はもちろん鉄道など走っていない。





