尾道——。広く膾炙しているこの町のイメージは、坂の町、文学の町、造船の町といったところだろうか。最近ではいくつもの島々を飛び石の如く伝い、四国は愛媛県今治市までを結ぶしまなみ海道とそこを走るサイクリストたちの町としてのイメージも定着しつつある。

 もう少し古いところでいうならば、映画の町というのも外せない。大林宣彦監督の「尾道三部作」、もっと遡れば小津安二郎監督の『東京物語』。久々に『東京物語』を見返したが、小津調で淡々と描かれる壊れゆくひとつの家族の姿に切ない気持ちにさせられた。

 それはともかく、そんな尾道の玄関口といえば、山陽本線尾道駅といって間違いない。駅のすぐ目の前には港があって、夕暮れ時になると向島の学校に通う高校生たちが、渡し船に乗って帰ってくる。

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 レトロな味わいが人気の商店街も、駅のすぐそばだ。実に“尾道らしい”駅である。

 だがしかし。ここ尾道、広島県を代表する観光都市だ。だから、というのもヘンだけれど、ちゃんと新幹線の駅もある。新尾道駅だ。

山陽新幹線“ナゾの通過駅”「新尾道」には何がある?

山陽新幹線“ナゾの通過駅”「新尾道」には何がある?

 新尾道駅は尾道駅から北に約3km離れた場所にある、山陽新幹線の単独駅だ。尾道駅周辺に広がる市街地とは国道184号で結ばれる。

今回の路線図。のぞみの通過駅「新尾道」には一体何があるのか。

 中間には国道2号の尾道バイパスが横切り、さらに北の山中には山陽自動車道も通っている。いくつもの道路や鉄道が駆け抜ける尾道市内にあって、山陽新幹線新尾道駅もそのひとつ、というわけだ。

 さすがに新幹線の駅らしく、新尾道駅のホームは高架の上にある。