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山陽新幹線“ナゾの通過駅”「新倉敷」には何がある?

あれ、地図を見ると…?

2021/10/11

genre : ライフ, , 歴史, 社会

 岡山県といったら、倉敷である。こういうと異論もあるに決まっているが、岡山県に観光に行くという話になると、たいていは倉敷が俎上にのってくる。美観地区に大原美術館、チボリ公園……あ、チボリ公園はもうなくなっていますね。

 そんな岡山県筆頭の観光地であるところの倉敷に行くにはどうすればいいのだろうか。今どきはグーグルマップなどで検索すればいいので間違えることはないだろうが、一昔前ならとんでもない間違いを犯した人も少なくないのではないかと思っている。

「倉敷の名を持ちながらも倉敷にあらず」

山陽新幹線“ナゾの通過駅”「新倉敷」には何がある?

 時刻表などをペラペラめくって新幹線を調べていくと、山陽新幹線に「新倉敷」という駅がある。新幹線で大阪に行くなら新大阪駅、横浜に行くなら新横浜駅を使う。だから倉敷にも新倉敷駅を使えばいいのか。うーむ、でも新倉敷駅は「のぞみ」が停まらないし、それどころかほとんど「こだま」だけじゃないか。しかたがないから岡山駅で「こだま」に乗り継いで行くことにしよう……。

今回の路線図。地図を見ると思った以上に「倉敷」ー「新倉敷」は離れている

 これはもう、まったくの間違いである。地図をよくよく見てみればわかるが、倉敷駅を核とした倉敷の本来の中心と新倉敷駅はとてつもなく離れている。本来の倉敷との間には高梁川がとうとうと流れ、歩いていくなんてもってのほか。タクシーを使ってもいいが、ちょっと料金が気になる距離だ。となると、結局在来線に乗り換えて2つ戻って倉敷駅に向かうしかない。

 いやいや、新大阪だって新横浜だって似たようなものじゃんか、とご指摘をいただくかもしれない。でも、彼らは「のぞみ」が停まる泣く子も黙る大ターミナル。新倉敷駅にはわざわざ岡山駅で「のぞみ」から「こだま」に乗り継いでいるのだ。にもかかわらず在来線でちょっと岡山方面に戻らねばならぬのは、あまりに敗北感が大きい。

 そんなわけで、倉敷駅に向かうためには岡山駅で「のぞみ」を降りてとっとと新幹線とおさらばし、在来線に乗りかえるのがベスト。岡山~倉敷間には山陰を目指す特急「やくも」も走っているので、ちょっと贅沢に短い特急の旅をしてもいい。いずれにしても、列車数が多いから新倉敷駅からとぼとぼ戻るよりもよっぽど楽である。

 つまり、新倉敷駅は倉敷の名を持ちながらも倉敷にあらず、といったような存在になっているのである。このあたりの事情はけっこうほとんどの人が知っていて、おかげで新倉敷駅は倉敷観光の玄関口とは言い難い地味な存在になってしまっている。件のごとく「のぞみ」は通過、停まるのはほとんど「こだま」ばかりというところからもそれが現れている。