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「小さいマーケット」をたくさん作る。「本当に好きな人」に届ける

――アソビシステムでは雑誌も発行されているんですね。

中川 『NIL』というストリートファッションカルチャー誌を去年発刊しました。今年出した『LE PANIER』(るぱにえ)はロリータファッションに特化した雑誌なんですが、これは日本と中国で同時発売しました。中国って今、ロリータ人気がすごいんです。

『NIL』

――ピンポイントに照準を合わせて展開するんですね。

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中川 「小さいカルチャー」をいっぱい作って、「小さいコミュニティ」をたくさん生み出したいんです。

――いわば「小さいマーケット」をたくさん作るということでしょうか。

中川 そうですね。この10年でメガヒットが生まれにくくなったという話をしましたけど、そうであるならば「本当に好きな人」に届くものをたくさん作ればいいのかなと考えているんです。お茶の間全体に向けて「みんなが好きそうなもの」を探っていくより、お茶の間のちょっと上を狙う感じです。

『LE PANIER』

――みんなに好かれることを考えるよりも……。

中川 この人たちに、この人たちにって、小分けで好かれることを考えたほうがいいんじゃないかなって思います。きゃりーだって、今でこそ認知度はあると思いますけど、自分の筋を守っているので「お茶の間全体」に受けようと自分を曲げることはないですね。

1対1のビジネスモデルだけじゃないんだぞって

――きゃりーぱみゅぱみゅさんは、まさに日本のカルチャーアイコンとなりました。2年後、東京五輪が開催されます。アソビシステム、きゃりーさんの2年後のビジョンを、中川さんはどう描いているんでしょう?

©getty

中川 むしろ2020じゃなくて、2021に向けて頑張りたいと思っているんです。海外の人たちと話をしていてもみんな「2020年の東京まではスポンサーがつくよ」っていうんですけど、だったらオリンピックが終わったあとどうなっちゃうのって(笑)。だから2021年に向けて残せる何かを準備しておかないと怖いことになるなって思ってます。

――ファッション、食、観光に関する日本のポップカルチャーを世界に発信する「もしもしにっぽんプロジェクト」や、Airbnbと業務提携して始められた原宿ツアーの事業など、お仕事の展開はどんどん大きくなっていますが、今後の野望は何ですか?

中川 野望ですか? そうだな、ゴールを決めちゃうと伸びなくなっちゃうので設定しないようにしてるんですけど、リアルと人の価値だけは忘れないようにしたいですね。最近のスタートアップってCtoCが中心になってきていますよね。それだと、カルチャーを作り出す僕らの仕事の意味ってなくなっちゃう。1対1のビジネスモデルだけじゃないんだぞ、プロがコンテンツを作ることにはまだまだ希望があるぞって、そこは最近の流れに負けないように頑張っていきたいですね。けっこう、考え方が昭和なんですよ、僕。

 

なかがわ・ゆうすけ/1981年東京生まれ。東洋大学在学中からクラブイベント運営に携わり、2007年アソビシステム設立。

写真=平松市聖/文藝春秋