多くのロシア国民が三姉妹に同情したが…

 事件の詳しい経緯が報じられると、ロシア国民は三姉妹の境遇に同情を寄せるとともに、彼女らを守れなかった社会のシステムに怒り、逮捕・勾留された3人の刑事訴訟の停止や釈放を求める集会を開催、都合35万筆もの署名が寄せられる。

写真はイメージ ©getty

 沸き立つ世論のなか、2018年7月30日から3姉妹の勾留尋問がモスクワのオスタンキノ裁判所で始まった。弁護側は3姉妹の行為を父親からの暴力から逃れるための正当防衛とし、無罪を主張する。対して、検察側はミハイルの妹夫婦ら親族を証人に呼び反論する。

 ミハイルは娘たちを溺愛し、ブランドものの服や最新のスマートフォンまで娘たちが欲しがるものを何でも買い与えていた。そんな親バカのミハイルが実の娘に性的虐待を働くわけがない、と。実際、ミハイルが暴行を働いた証拠は彼女らの証言しかなかった。

ADVERTISEMENT

 検察側はさらに、姉妹が事前にナイフやハンマーなどを購入していたことを明かし、犯行は周到な準備・計画のもとに実行されたと主張。その後、3人の精神鑑定が実施され、三女マリアがPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症していることが判明したものの2019年6月14日、裁判所は姉妹を計画的な陰謀の末に集団で犯した殺人罪で起訴する(マリアは精神障害があるため厳重に警備された精神科施設に収容)。

 しかし、事態はここから予想もしない方向に転がり始める。