このままでは殺される……性的虐待を続ける父親に監禁され、命の危険を覚えた3姉妹はついに彼を殺害してしまう。正当防衛とし、無罪を主張するものの、裁判所は彼女たちを殺人罪で起訴。いったい3人はどうなってしまったのか? 2018年(平成30年)にロシアで起きた事件の結末を、我が子を無惨に殺された親、学生時代ひどいイジメに遭った者などが仕返しを果たした国内外の事件を取り上げた新刊『世界で起きた戦慄の復讐劇35』(鉄人社)から一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)

写真はイメージ ©getty

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父親の殺害を決意

 地獄のような日々が続くこと3年。精神の限界に達した3人は相談のうえ父親の殺害を決意し、ハンマーやナイフを用意する。そして事件当日の2018年7月27日を迎える。この日、父ミハイルは精神神経センターで薬物依存の治療を受け帰宅すると、無駄な出費(治療費)に怒りを露にし、それを娘たちにぶつける。

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 3人全員を部屋に閉じ込め、長女クレスティーナ(当時19歳)の顔面に唐辛子スプレーを噴射。ガスを吸い込んだことで喘息を起こし意識を失った娘などお構いなしに自室の肘掛け椅子でうたた寝するミハイル。このままでは自分たちも殺されるかもしれない。身の危険を覚えた二女アンジェリーナ(同18歳)と三女マリア(同17歳)はナイフとハンマーを手に、父の部屋のドアをゆっくり開けた。ミハイルは寝息を立てている。今しかない。まずはアンジェリーナがハンマーを振り上げ父の頭部を殴打する。

 が、非力な少女の力では致命傷に至らず、衝撃で目を覚ましたミハイルが頭を押さえながら2人の娘に抵抗、もみ合いが始まると彼女らはすぐに劣勢に追い込まれる。

 そこに飛び込んできたのが意識を取り戻したクレスティーナ。彼女は手にした催涙スプレーを父に噴きかけた。激しい目の痛みに悶え苦しみながらアパートの階段へ逃げるミハイル。すぐに追いついたアンジェリーナが改めて十数回ハンマーで殴打し、マリアがナイフで心臓を中心に30数ヶ所を滅多刺しにして死に至らしめた。現場は血の海。三姉妹は父に襲われたように見せかけるため意図的に腕や足をナイフで切るなど小細工を施した後に警察に通報するも、犯行はすぐに見破られた。