ひろゆきや田村淳が「2億円トイレ反対派」に
――今回、米澤さんが手掛けたトイレ以外にも若手建築家が携わったトイレは複数ありました。そのうち、なぜ米澤さんのトイレ5だけが炎上騒動に巻き込まれてしまったと思いますか?
米澤 大屋根リングが350億円するというのは、その妥当性の判断が特殊性ゆえに想像しづらいかと思います。一方、トイレというのは身近かつ切実であり、それが「2億円」もするというと、大規模な豪邸が建つ予算でもありますので「高額である」と想像させてしまいます。
加えて、一部メディアで「デザイナーズトイレ」と紹介されたことで、「デザイナーが担当したから、無駄に高額なのでは?」という印象も与えてしまったように見ています。実際には規模が大きいので高額になっているということなのですが……そのような状況下で僕がSNSを通じて反論したので炎上の矢面に立たされることになったと考えています。
とはいえ個人的には「2億円のデザイナーズトイレ」とだけ聞いたときに一般の方が「高い」と感じる感覚は理解できるので、皆さんの認識そのものを責めるつもりはありません。が、批判している人たちが参照している情報がそもそも誤っていることが多く、それを基に叩かれ続ける状況は、正直辛い部分がありました。例えば「トタン屋根」とよく言われたんですが、実際にはガルバリウム鋼板と呼ばれる素材を使っていましたし。
平米単価は通常より安いのに、叩かれ続けた
――米澤さんは、当初はこの炎上騒動を静観していました。
米澤 当初は一過性のものと捉えて、すぐに収束すると思っていたので静観していました。でも、だんだんと蓮舫さんやひろゆきさん、さらには田村淳さんといった著名人が議論に参加したことで、風当たりが一層強くなっていって……。
2024年の元日に能登で震災が発生したことも、批判的な意見に拍車をかけていましたね。「トイレが無駄に高額だ」という前提の上で「震災が起きている大変な時期に、こんなものを作っている場合じゃないだろう」というネガティブな論調が多数見られました。
――当時は、批判一辺倒で、応援してくれる人はいなかったのでしょうか。
米澤 2024年の2月に大阪府知事の吉村洋文さんが「新進気鋭の建築家が魂を込めて設計した」とコメントしてくださったことはありました。さらに、元府知事の橋下徹さんからの助言を受けて、一般的な公共トイレの平均平米単価(約98万円)と比べて、万博のトイレは単価が低いと発信してくれたのですが……。
――また叩かれたと。
米澤 はい(苦笑)。平米単価の話題に及ぶと、今度は「わずか半年間なのに、常設とそう変わらないコストのトイレを作っているのか?」という批判が見られるようになりました。
「期間が短いぶん建築費も少なくなるだろう」と思われるかもしれませんが、水道や電気設備の設置もそうですし、半年の期間だからといってその間に大地震や台風が発生しないとも限りませんので、それに耐えうるだけの構造体をつくる必要があります。そのため、実際に行う工事は、常設のトイレとさほど大差ないんです。確かに、皆さんの言い分や気持ちも理解できるんですが……。

