10月13日に幕を下ろす大阪・関西万博。会期の前からさまざまな話題を集め、中でも若手建築家が携わったプロジェクトの一環として生まれた「トイレ5」は、一部メディアの報道をきっかけに工費などが取りざたされ「ぼったくり」「2億円トイレ」と揶揄されて炎上した。
SNS上の声には、「便器1個で400万円」「金ピカトイレ」といった誤った発信も相次ぎ、トイレ5の建築に携わった米澤隆さん自らが火消しに追われる場面もあった。一方、開幕後は手のひら返しのように好意的な反響が広がっており、ファンクラブが生まれるほどの“人気パビリオン”となった。米澤さん本人に、2億円トイレを巡る世論の変化を振り返ってもらった。(全3回の3回目/最初から読む)
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初日に「故障して2億円を1日で使い切った」と猛バッシング
――準備期間からさまざまな騒動が巻き起こりながら、大阪・関西万博は4月13日に幕を開けました。その後もトイレを巡って批判に晒される場面はありましたか?
米澤隆さん(以下、米澤) 排水トラブルに見舞われた開幕初日こそ「2億円トイレ使用禁止、打つ手なし」と報じられたり、「1日で2億円を使い切った」などと批判されましたが、現地を訪れた皆さんの「意外に使いやすかった」とか「カラフルで可愛く、万博らしいデザイン」といった感想が聞かれるようになってからは、徐々に批判が収束していったように感じます。
その後も毎週のように会場に足を運んできましたけど、意外なことに、面と向かってネガティブなことを言われたことは一度もないんですよ。
――やがて米澤さんの作ったトイレ5は、“人気パビリオン”と呼ばれるほどに愛されるようになりました。
米澤 公式プログラムには「トイレ5」としか書いてありませんから、「どこに2億円トイレがあるの?」と探される方も多かったようです。その後、来場者の方々が「2億円トイレパビリオン」といった言葉とともに写真やポジティブな感想をSNSに上げてくださって、ものすごい応援ムードを感じました。

