「最難関パビリオン」の声もある「動く米澤パビリオン」をスタート

――米澤さんはこの事件以降に方針を転換し、「動く米澤パビリオン」として活動を始められます。

米澤 いろいろ調べていくと、国や協賛企業ではない僕は、場内で多くの人を集めてのイベントを実施するのが難しいとわかりまして。そこで、会場内で声をかけてくれた人に個人的にスタンプを押す「動く米澤パビリオン」の活動を始めることにしたんです。

 ヒントとして僕の居場所を随時Xに投稿するようにして、発見してくれた4~5人にスタンプを押したら、移動する形で、一部では「最難関パビリオン」と言ってくれている人もいるみたいですね。

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――さらに人気は加速し、「2億円トイレファンクラブ」も設立されました。

米澤 スタンプ騒動の現地にいた方が立ち上げてくださったんです。騒動の直後に「ファンクラブを立ち上げさせてほしい」とオファーをいただいて、了承しました。ファンクラブのXのアカウントは今、1000人超のフォロワーがいて、ファンクラブの方と現地でオフ会を開催したりもしました。

開幕前からの大炎上を跳ねのけ、2億円トイレは“人気パビリオン”となって多くの人に愛された (米澤隆建築設計事務所提供)

クリエイターは委縮、疲弊している

――さまざまな紆余曲折を経て、大阪・関西万博は閉幕を迎えます。あらためて大阪・関西万博を振り返ってみての思いを聞かせてください。

米澤 「楽しい思い出やたくさんの応援、ポジティブな言葉とともに、幸せなまま終われるのかな」という思いもありつつ、僕の戦いはまだまだ終わっていないんじゃないかとも感じます。

 例えば、「なぜ炎上は起きたのか、炎上は何をもたらしたのか」「誤った情報が発信され拡散されネガティブなイメージが定着するメカニズムとは」などについては、あらためて広く議論をしなければという思いがあります。

 東京五輪もそうでしたが、開幕前に嵐のような批判に晒される一方で、蓋を開けたら嘘のように盛り上がり、結局最後はポジティブな雰囲気で終わる――こうしたサイクルの中で、たくさんのクリエイターが委縮、疲弊してしまっています。チャレンジの芽を摘むことがないような社会の在り方については、継続して問題を提起していきたいですね。

 当初から、2億円トイレに関するSNS上の投稿やメディアの報道は可能な限り記録しようと決意して、いま数千件のスクリーンショットが蓄積されています。同じことが繰り返されないよう、今回の騒動を貴重な機会と捉えてしっかりと分析し今後の社会のための教訓として残していこうと考えています。