10月13日に幕を下ろす大阪・関西万博。終盤は連日20万人を超える来場者数という盛況ぶりを見せたが、準備期間にはさまざまな炎上騒動が起こった。
その一つが、工費が高いなどとやり玉に挙げられた「2億円トイレ」だ。企画から携わった建築家の米澤隆さんは、たび重なる非難に晒され、一時は入札業者が現れないほどの窮地に追い込まれた。本人に、騒動を振り返ってもらった。(全3回の2回目/3回目に続く)
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「ついに僕のところまで来たか……」
――2024年2月、米澤さんが若手を対象にしたプロジェクトの一環で建築に携わった「トイレ5」が、一部報道をきっかけに「税金の無駄づかい」「工費が高い」といった非難を受けるようになってしまいました。騒動を知った時の率直な感想を聞かせてください。
米澤隆さん(以下、米澤) 東京五輪や豊洲市場の移転など、国家的もしくはかなり大掛かりなプロジェクトにおいて、建築が非難されるのはたびたび繰り返されてきました。トイレ5がやり玉に挙げられる前も、万博そのものや大屋根リングがバッシングにさらされていましたから、「ついに僕のところまで来たか……」というのが、最初にいだいた感想だったと思います。
――おっしゃる通り、こうした事例は過去に何回もありました。背景には「わざわざ高いお金をかける必要があるの?」「なんでこんなに高いの?」といった感情があるように思えます。プロの目線から、こうしたケースはどのようにご覧になっていたのでしょう。
米澤 確かに数字だけ見ると高そうに思えますよね。とはいえ、万博やオリンピックのような国家プロジェクト規模の建築物を作る機会は、そうそうないと思うんですよ。
例えば、シドニーのオペラハウスは、当初の予定よりも十数倍~数十倍の予算をかけて完成に至ったと言われていますが、今ではシドニーを象徴する建築物として、多くの人に親しまれています。長い意味で見ると、投資した効果は出ていると見ることもできるでしょう。
万博は開催期間が限られるので評価は難しいですけども、かかった費用の「額面」だけではないプラスの要素はきっとあるんじゃないかと感じますし、過度に予算だけをとってブレーキを踏みすぎるのは、どうなのかなという思いはあります。

