「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに開催され、10月13日に幕を下ろす大阪・関西万博。終盤は入場できない人が出るほどの大盛況となったが、開催前~開催直後はネガティブな話題も目立った。

 三角形の屋根とカラフルなデザインが特徴的な「トイレ5」を設計した建築家の米澤隆さんも、その渦中に巻き込まれた一人だ。「建設費が高額だ」などと批判を受け「2億円トイレ」と揶揄され、SNSでは誹謗中傷の被害にもあった。米澤さんに、あらためて万博開催前から終幕までの騒動を振り返ってもらった。(全3回の1回目/2回目に続く

建築に携わったトイレが物議をかもした、米澤隆さん ©石川啓次/文藝春秋

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「2億円トイレ」の建築家・米澤さんの“これまでの仕事”

――米澤さんは大阪・関西万博を機に、通称「2億円トイレ」の建築家として広く知られることになりました。そもそも米澤さんの肩書である「建築家」とはどういう仕事なんでしょうか。

米澤隆さん(以下、米澤) 一般的に、近い言葉として設計者というのがありますが、それは単に建物を設計する人を意味します。これに対して、建築家というと哲学や理念をもちこれまでにないような建築を創造しようとしている人のことを意味すると考えています。

――2億円トイレで大きな話題を集めましたが、これまではどんな建築を手掛けてこられましたか。

米澤 京都出身であり名古屋を拠点に活動していることもあり、東海エリアから関西エリアにかけての建築が多いです。最近では名古屋駅の駅前広場や、東名高速道路・浜名湖サービスエリアにある商業施設などが注目いただいています。それ以外に、一般の住宅も手掛けていますよ。

©石川啓次/文藝春秋

――ちなみに、これまでにトイレを設計したことはあったんですか?

米澤 トイレ単独の建築を任されたのは、今回の万博が初めてです。ただ、トイレが付属する施設の建築を任されたことは何度もあります。例えば、和食料理店の建築を手掛けた際には、心を落ち着かせられるようにと、あえて庭を通ってアクセスするトイレを設けたりしたこともありました。

 生活の上で避けて通れない設備であり、“究極の個室空間”でもあるのがトイレです。それを、建築の中でどう位置付けるかという考えが中心だったので、トイレ単体に対する特別な思い入れがあったわけではない、というのが正直なところですね。