今後の海外での展開はユーザーの多いアメリカとヨーロッパを見据えている。

「ドール好きな人は世界でもオリエント工業の名前をすでに知っています。これまで手に入れることができなかった海外のお客様にも届けられるようにしていきたい」

 と、岡本さんは言う。

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うちの人形は道具ではない

 取締役の大澤瑞紀さんは、オリエント工業の製品の特徴についてこう話す。

「うちの人形の造形は、どこから見てもかわいいようにつくられています。単にマスク取りしてつくった製品には届かないような、一歩抜けた造形の力がしっかりある。どこから見てもかわいい、というのはすごいことで、実は人間の形とは少し違うんですよ。人間の形に一度解釈を入れて、再構成してつくっている。そこが海外製のものとは違う。ただ、このデザインが海外で受け入れられるかはまだ正直わからないところです。欧米諸国向けにデザインを工夫する試みは必要になると思う」

撮影=濱野ちひろ

 オリエント工業のラブドールは単なるセックスの道具ではない、と岡本さんと大澤さんは語る。

「海外製のドールは、セックスのための人形。でもうちの人形は愛し愛される、そういう対象になるようなラブドール。性的な意味だけではなく心の安らぎを得られるような人形なんです。皆さん、セックスの先に安らぎなどの心の満足の部分を求めているので、それをいい形で具現化できたら。セックスはあくまで一部の機能というか。人間にも性器があるからつけているだけで、そこにこだわっている感じではないんですよ。エロいものをつくりたいという気持ちもなかったし、技術を活かして医療とか芸術、美術に展開していけたらいいよね、という考え方でうちのスタッフは仕事をしています」

 商品を明確に「セックスの快楽を増大させる道具」と位置づけているジーレックス社とはなにもかもが違う。セックスはあくまで一部の機能、と断言する力強さこそ、“人形道”なのかもしれない。

 オリエント工業の特徴のひとつに、女性人気があるという点がある。女性の購入者もいるのだ。