「週刊文春」の名物連載「阿川佐和子のこの人に会いたい」に、長澤まさみさんが16年ぶりに登場。時代劇映画初主演作となる『おーい、応為』で、葛飾北斎の弟子であり娘でもある葛飾応為を熱演した長澤さんに、その舞台裏を語っていただきました。
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阿川 葛飾北斎役の永瀬(正敏)さんとは、共演してみていかがでしたか。
長澤 永瀬さんは俳優として大先輩なんですけど、威圧感も全くなくて優しくて。懐の深さたるや。とにかく芝居のことをずっと考えていらっしゃる方で。私自身、現場ですごく居心地がよかったです。そのおかげで、応為と北斎の関係性を上手く引き出せた気がします。
阿川 娘と父の関係を演じるにあたって、難しかったことはありますか?
長澤 父と子でありながら、絵の師弟関係でもあったことですね。応為は北斎のことを強く尊敬していて、北斎のために生きた人でもあった。同時に、応為自身も絵を描くことが好きだったんです。それで死ぬまで絵を描き続けるんですけど、「『好き』だけで死ぬまでずっと続けられるものなのかな?」っていう疑問があったんです。
阿川 ほうほう。
長澤 私自身、俳優業を好きでやっているのか、仕事だからやっているのかは、正直いまだにわからないんです。でもきっと、応為は絵を好きだからこそ続けていた。その精神力はとんでもないし、私には考えもつかないなって。それが演じていて面白かったですね。
阿川 もしかしたら、私たちが思うよりもっと大らかな時代だったのかもしれないけれど、江戸時代の女性が家事もせず、やりたいことだけして生きるってすごいことよね。それにしても、北斎の家って汚すぎやしません?(笑)
