見学ツアーが突然中止に

 板門店で行われてきた共同警備区域(JSA)への見学ツアーが、APEC開催期間と重なる10月末から11月初旬まで中断されることが確認された。このツアーはもともと南北間の緊張の高まりによって一時中断され、今年5月に再開されていたが、今回の中断は、米朝会談の可能性に備えた措置という見方が強い。

 これは在韓国連軍司令部の要請によって行われ、同期間は一般人だけでなく国連軍司令部主管の外国人特別見学も行わないという。

「10月末から11月初旬には、韓国統一省が実施する板門店特別見学はありません」(統一省報道官)

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「少し非常識な人」「若者たちは自分の国の事情より…」

 北朝鮮でトランプ氏はどのように見られているのか。脱北者が中朝国境周辺に住む家族との会話を書いたブログを読むと、第2次トランプ政権発足後、一部の現地住民は、「今後(米国と)対話があるなら、今回はうまくいけばいい」という期待を持った反応を見せているということだ。

 また、別の住民はトランプ元大統領を「少し非常識な人」と評価し、今後、北朝鮮に対する米国の政策がどのように変わり、これが住民にどのような影響を及ぼすのか不安感を持って注目しているという。

「(北朝鮮の)若者たちは発展のない(自分の)国の事情より、国際情勢をより敏感に、興味深く見守っている」とし、「希望的な未来を切実に望む若者たちは、仲間同士で集まり『トランプ政権の継続が我が国の政治や経済に、より直接的な影響を及ぼしてほしい』という願いを示している」と話した。

 一方、(北朝鮮の)清津(チョンジン)市の若者たちはトランプ氏の服やヘアスタイル、性格、趣味はもちろん、彼の妻と子供など家族関係に対しても好奇心を見せながら「本当に特異な米国大統領」と話しているという。トランプ政権による自国優先主義政策について、「米国と帝国主義の総破産につながるだろう」とする報道もある(朝鮮中央通信、3月15日)。

会合が行われる場所は…

 米ホワイトハウスの関係者は先月30日、「トランプ大統領は金正恩氏といかなる前提条件もなしに対話することに依然としてオープンな立場をとっている」と明らかにした(聯合ニュース2025年10月1日)。

 もし会合が板門店北側地域で行われるとすれば、場所は板門閣の付属建物である、「板門館」(旧・統一閣)になる可能性が高い。旧・統一閣は2018年5月に韓国の文在寅大統領(当時)と金正恩氏が2度目の南北会談を行った場所だ。

2018年4月27日、板門店の軍事境界線で握手を交わそうとする、金正恩委員長(当時/左)と文在寅韓国大統領(当時)。このときは韓国側施設「平和の家」で会談した ©EPA=時事

 北朝鮮は2024年1月ごろ、板門店の統一閣の扁額(へんがく)を「板門館」に変更し、新たに取りつけたという。統一閣は1985年8月、金正日(キム・ジョンイル)総書記の指示で作られた会談用の建物だ。

 第1次トランプ政権の2018年には、シンガポールでの第1回米朝会談を控える中、ソン・キム駐フィリピン米国大使(当時)がチェ・ソンヒ北朝鮮外務次官(当時)に会い、6回もの実務会談を行ったのもこの旧・統一閣であった。統一閣の名称は金正日総書記自らが名付けたと知られている。