北朝鮮は10月10日の朝鮮労働党創建80年記念行事を盛大に祝った。海外からも中国やロシア、ベトナム、ラオスから首脳級が訪朝。金正恩総書記も笑顔が途切れることがなかった。記念日をはさんで数日間に及ぶ様々な行事に、西側メディアが「キム・ジュエ」と呼ぶ金正恩氏の娘は参加しなかった。一方、北朝鮮メディアが流す映像や写真を見ると、金正恩氏の実妹、金与正党副部長の興味深い動静も明らかになった。
北朝鮮外交の晴れ舞台で存在感がなかった金与正氏
ジュエ氏は9月、金正恩氏の中国訪問にも同行。2023年9月に実施された建国75周年の軍事パレードでは金正恩氏の隣で行事を見守った。23年7月の朝鮮戦争戦勝(休戦)70周年パレードでは、ロシアのショイグ国防相(当時)ら中ロの来賓が金正恩氏の脇を固めた。今回のパレードも、ベトナム、中国、ロシアの来賓が参加したため、ジュエ氏の参加を見送ったとも言える。ジュエ氏は9月の訪中時にも、公式行事には参加していない。ジュエ氏の現在の推定年齢は12歳で、日本の中学1年生にあたる。公職もなく、北朝鮮では名前すら明らかにされていない人物を参加させるのが、北朝鮮の体制にとって負担だったとも考えられる。
ただ、それよりもはるかに興味深かったのが金与正氏の動静だ。金与正氏は今年8月20日の朝鮮中央通信の報道で、外務省当局者と協議する席で韓国批判を展開するなど、北朝鮮外交を総括する立場に就いているようだ。金正恩氏が9月に訪中した際には、同氏とロシアのプーチン大統領が乗ったリムジンに同乗し、存在感を見せつけた。北朝鮮メディアが捉えた金与正氏の写真はこの1年間で60枚を超える。それなのに、北朝鮮外交の晴れ舞台だった80周年記念行事で、金与正氏の存在感はまったくと言っていいほどなかった。
10月8日から13日まで、朝鮮中央通信が配信した金正恩氏の動静を伝える写真は計229枚。軍事パレードやマスゲームへの参加、中国、ベトナム、ロシア、ラオスなどの各要人との会談など、いずれも金与正氏が参加して当然とも言える行事ばかりだ。ところが、このなかで金与正氏だと判断できるのは3~4枚に限られる。しかも、金与正氏の顔の表情が読み取れる写真は1枚もなく、かろうじて背格好と髪飾りから金与正氏だと判断できるものしかない。

