ガンバ大阪のクルピ監督が成績不振(現在16位)で解任され、トップのコーチでU-23監督でもある“ツネ様”こと宮本恒靖が新監督に就任した。
ガンバOBで選手時代に華麗過ぎる経歴を持つ宮本の監督就任に、SNS上では「なぜ、今なのか」と不満気な声が多かったが、個人的にはまったく同感。
なぜ、このタイミングで宮本なのか――。
最近のガンバは日本人コーチについてはOBという“血筋”を重視する傾向にあるが、監督は本当に宮本以外の選択肢がなかったのだろうか。もし、クルピの後は宮本ありきだったのであれば本当にガッカリである。
クラブは、6年前の苦い経験をまったく活かしていないからだ。
松波監督就任という「苦い経験」
2012年のことだ。フロントはセホーンを監督にしてスタートし、西野朗前監督が築いた攻撃サッカーのDNAをいとも簡単に捨ててしまった。その結果、チームは不協和音を奏で、開幕から公式戦5連敗(ACL含む)というクラブワーストを記録。第3節終了後、セホーン監督と呂比須ヘッドコーチは解任され、山本浩靖強化部長も辞任した。
その後フロントは、当時コーチでガンバOBの松波正信を監督にした。今回の宮本のケースと同じように……。崩れたチームを再建するには経験ある指導者を起用するべきだが、松波は監督未経験で明らかに時期尚早だった。そもそも将来のガンバを牽引すべき逸材を、火中の栗を拾う形で監督にし、責任を押し付けるやり方はよくなかったのだ。しかし、松波は、今回宮本が5時間もかけて説得されたのと同じようにフロントからの強い要請を受け、「世話になったガンバを見捨てるわけにいかない」と男気を見せて監督を引き受けた。
だが、一度狂った歯車を新人監督が容易に修正できるはずもなく、シーズン最終戦の磐田戦に負け、クラブ史上初めてJ2に陥落した。松波はガンバをJ2に降格させた監督となり、そのシーズンで退任。つまり、一度、失敗し、苦い経験をしているのだ。