公明連立に対する評価は…
中国国内で発表されている他の論説記事を見ても、論調は基本的に手厳しい。従来の高市総理の右派的な政治姿勢や靖国・南京関連の発言の蓄積に加えて、今回の新政権で親中国的な公明党が与党から離れたことが、厳しい意見が出やすい理由となっているようだ。
なかでも極めて辛辣だったのが、専修大学の徐一睿氏が上海のニュースウェブ『澎湃』に寄稿した骨太の経済論説だろう。徐氏は公明党が外れた高市政権が、財政の健全性を無視して有権者に迎合する「極右財政ポピュリズム」に傾斜したと主張。減税と歳出拡大を両立させるために国債が大量発行されれば、次世代に負担のツケを回すだけであると手厳しく指摘している。
維新と連立する高市政権が公約どおりの財政政策を実行すれば、円安の進行と輸入物価の上昇を招き、日本の財政は危機に瀕するというのが徐氏の主張だ。在日中国人学者による専門分野の論説だけに、日本への解像度が高い高市政権批判になっている。
もっとも、他の中国国内の論説は、靖国・台湾・対中強硬派といった特定のワードで思考停止気味のものも多く、この水準には達していない。ただ、高市政権は長く続かない──、という見立ては比較的広く共有されているようだ。
高市氏はどこまで信念を貫くのか?
ちなみに、日本のSNSやYahoo!ニュースのコメント欄などでは、習近平が祝電を控えたことに、「高市総理にビビっているからだ」といった勇ましい意見が飛び交っているが、これは正しくない。中国側は高市総理の政権担当能力や権力基盤を明らかに低く見積もっており、ゆえに「なんとなく失礼」「なんとなく雑」という塩対応をおこなっている。自分たちが先んじて明確な敵意を剥き出しにはしないものの、ややナメながら様子を見ているというのが現在の中国だ。
近年、中国の対日姿勢は「悪いなりにマシ」だった。自国の不景気と、予測不可能なアメリカの動きのなかで、対日関係をひとまず安定的にしておくことは彼らの利益に合致したからだ。ゆえに、両国関係を不安定化させるリスクを持つ高市政権は、中国の側からは歓迎される存在ではない。
中国からの「軽侮」を、高市政権はどう跳ね除けるか。台湾への戦略的コミットはさておき、靖国参拝は経済や国民生活の向上に直結せず、中韓両国以外に対する国際関係にも影響が大きいかと思われるが、高市総理がどこまで信念を貫くか。新政権がどう動くかは、なかなか興味深いところではある。
