若年齢者の方がはるかに多い事故件数

 マスコミは、高齢者が事故を起こすと大喜びで、高齢者の運転は危険なので、免許を返納した方がいいですよ、というキャンペーンに余念がないが、第一当事者としての事故件数は、高齢者より、若年齢者の方がはるかに多いのである。2024年の統計によると、免許保有者10万人当たりの第一当事者としての事故件数は、70~74歳329.6件、75~79歳358.0件、80~84歳416.3件、85歳以上496.1件であったのに対し、16~19歳976.3件、20~24歳551.0件、25~29歳399.9件、30~34歳310.4件であった。ちなみに35~69歳までは、どの年齢層も300件以下であった。

 以上のことに鑑みれば、高齢者に認知機能検査を受けさせるより、29歳未満の人に、運転者として適格かどうかの検査を受けさせる方が、余程事故を減らせるだろう。壮年までの人が事故を起こしても余程重大な事故でない限り、マスコミはあまり騒がないが、高齢者が高速道路を逆走したりすると大騒ぎで、高齢者の免許返納をあたかも社会的正義のごとく言い立てるのは、どういう利権が絡んでいるのだろうか。

「血圧降下剤、飲んだら乗るな」

 精神科医の和田秀樹の話によれば、高齢者の事故は正常な意識の時に起きたのではなく、薬の副作用だという。私もこの意見を首肯したい。特に血圧降下剤は意識の低下、注意力散漫、めまい、ふらつきなどを引き起こすことがあり、重大な交通事故に繫がる恐れがある。飲酒は過度にバッシングされるが、製薬会社に忖度してか、マスコミはほとんどこのことに言及しない。「血圧降下剤、飲んだら乗るな」というキャンペーンでもする方が、認知症の検査をするよりも高齢者の交通事故を減らせると思う。

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 まだ運転可能な高齢者から運転免許を取り上げると、都会ならばともかく、田舎で、生活を自動車に依存している高齢者は大変困ることになる。食料などは配達してもらうにしても、自由に外出することができなくなると、社会的な活動が減り、他人と交流することが乏しくなり、これは認知症への道である。認知症になりかけの老人から、免許を取り上げるのではなく、追突防止装置などの様々な安全装置を装着することに補助金でも出して、少しでも安全に運転できるようにサポートする方が、老人福祉の精神に資すると思う。なるべく長いこと、自立して生活できる高齢者を増やした方が、すなわち健康寿命を延ばした方が社会的コストはかからない。それとも高齢者の活動を制限して寿命を縮めて、年金を減らそうとの陰謀なのか。