加齢に伴う身体機能の低下を自覚し、安全運転に必要な知識や技能を再確認することで、交通事故を未然に防ぐ目的で行われる運転免許の高齢者講習。

 しかし、科学・社会・環境問題評論家として活躍する池田清彦氏(78)は、その実態を「ほとんど詐欺」と断じる。いったいなぜなのか。ここでは、同氏の著書『明日は我が身と思うなら』(角川新書)の一部を抜粋。体験とデータを交えて語られる池田氏の見解を紹介する。(全2回の2回目/はじめから読む

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ほとんど詐欺の高齢者講習

 今年で78歳になるので、運転免許を更新するために義務付けられている、認知機能検査と高齢者講習を受けてきた。75歳の時に初めて受けたので、二度目である。はっきり言って、これは高齢者いじめ以外の何ものでもない。

 高齢者講習は、教習所に行って、座学をした後、自動車の運転技能を見てもらい、教習所に料金を払うのである。これで、1万円はボリすぎだろう。運転があまりに下手であれば、免許の更新はできませんということであればわからなくもないが、ただ、講習を受けたという書類が免許の更新に必要というだけで、なんで大金を払ってまでこんなことをさせられるのか。若者の人口減と自動車離れで、お客さんが減った教習所を倒産から救うために、行政と教習所がつるんでやっているとしか思えないな。高齢者のお金と時間を奪うのが目的なのか、ほとんど詐欺である。

写真はイメージ ©︎mapo/イメージマート

 認知機能検査というのがこれまた酷い。動物や花や家電などの絵を16枚見せられて、しばらくの間、検査の結果には影響しない作業をさせられて、先ほど見せた絵を思い出して、名称を書けという検査で、短期記憶の衰えを測定しているのだろうが、短期記憶能力と安全運転能力は実はあまり関係ない。安全に運転するには現在の状況を的確に把握する能力があれば十分で、短期記憶能力が多少落ちたところで、大丈夫なのだ。