高齢者専門の精神科医として、36年間、延べ6000人の患者を診てきた和田秀樹氏。高齢者は重要な消費者で、「日本経済が復活する芽」だと考え、高齢者の生き方にスポットを当てた著書を多数出版している。

 ここでは、そんな和田氏が、高齢者が人生を楽しむためのヒントを綴った新著『老いるが勝ち!』(文春新書)より一部を抜粋。少子高齢化によって進む「シルバー民主主義」について、和田氏はどのように考えているのか。(全2回の2回目/1回目より続く

写真はイメージ ©178photography/イメージマート

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外国から見たら、日本は露骨に高齢者差別をやっている

 シルバー民主主義についてお話ししましょう。理屈の上では人口の3割の高齢者がいて、有権者の4割を占める。しかし、投票率が高いから5割くらいの影響力がある、というのがシルバー民主主義の意味するところです。

 そのせいで日本の活力がそがれたり、年金問題に解決がつかないとか言われていますが、そんなものはシルバーのせいでも何でもないでしょう。

 それどころか、年金受給開始年齢はどんどん遅らされているし、自動車免許に関して世界で唯一高齢者に認知機能検査を義務付けたり、ちっとも高齢者に気遣っていないのが現状です。

 外国から見たら、この国は、露骨に高齢者差別をやっているわけです。老害化する前に「高齢者の集団自決、集団切腹みたいなことしかない」と言い切った経済学者もいました。

 その発言はネットでさんざん批判されましたが、彼はテレビに出続けていました。最終的には彼が出演したキリンの缶チューハイのCMはお蔵入りになりましたが、それまではさほど騒ぎにはなっていませんし、テレビ出演はすぐに復活しました。

このような発言が自殺の背中を押す可能性も

 試しに高齢者をLGBTに置き換えてみてください。これがどれほどの暴論かがはっきりします。「LGBTの集団自決、集団切腹みたいなことしかない」だったら、どうですか? もう二度とテレビには出られないですよ。高齢者をターゲットにしたからと言って、許されることではないでしょう。

 こんなことは、杉田水脈氏でさえ言いません。生産性がないとは書いても集団自決しろとは書かないでしょう。