2022年3月に中学を卒業すると、4月からあきこさんは定時制高校に通い始めた。そして同時期に、トー横にも通いはじめたという。
「中学卒業後はあきこの祖母、つまり私の母が主に面倒を見ていて、私はほとんど連絡を取っていませんでした。家にいる頃も、あきこの口から『トー横』という言葉を聞いたことはなく、自殺した後にあきこの友人に聞くまで、『トー横』に通っていることは知りませんでした」
あきこさんが一人暮らしを始めて9カ月後の2023年1月、浩三さんの母の仲介で、浩三さんとあきこさんの距離が少し縮まる出来事があった。
あきこさんから「(浩三さんと)会いたい」という話が出て、実家で久しぶりに向き合う時間を作ったという。そのとき、交際相手のAも紹介された。
「あきこから『付き合っている人がいる』と聞かされ、AとLINEで少し話しました。『お付き合いさせてもらっています』と挨拶してくれて、こちらも『そうなんですね』という、なんということもない会話だったと思います。通話だったので顔は見ていませんが、会ったことがあるという私の母は“不良っぽい金髪のにいちゃん”だと教えてくれました」
16歳の娘に交際相手がいることは不安ながら嬉しい気持ちもあったが、2月頃にAがあきこさんに暴力を振った事件が発覚して状況は一変した。
「あきこさんが暴行を受けて警察署で保護しているので迎えに来て欲しい」
「新宿警察署の生活安全課から連絡があり、『あきこさんが暴行を受けて警察署で保護しているので迎えに来て欲しい』と言われたんです。暴行を受けたのは新宿にあるラブホテルより安い時間貸しのレンタルルームで、Aから殴られる、蹴とばされるなどの被害を受けた、と。急いで車で新宿に向かいました」
警察署につくとあきこさんは大きなけがもなくほっとしたが、Aに対して「法的に制裁をしてやる」という怒りが湧いてきたという。
「同時に、恐怖感もかなりありました。警察官から彼氏に殴られたということを聞いたあと、『もし今後、Aとあきこが会ったらあきこが死んでしまうかもしれない』と直感的に思い、何としてでも守らなければ、と感じました。病院に行き、検査を受けると『軽度の打撲』という診断でした。診断書をもとに被害届を出した方がいいと思ったので、あきこを連れて新宿署に行きました。警察で被害届は受理されて、『Aさんとは別れて、新宿に来ないように』と言われました」
