もっとも、一同に残っているのはつらい思い出だけではない。リーウェンとジンシェン監督が脚本を改稿するうえで特にこだわったのは、シャオアイとミンミンが、思いを寄せるルー・クー(路克)と出会う塾のシーン。「塾の思い出は今でも懐かしい」と監督は語る。
ジンシェン監督 僕は塾が大好きだったのですが、それは勉強が好きだったからではなく、女の子と話すことができたから。あのころは男子校生だったので、塾のほかに女子と話す機会がなかったんです。もうひとつ、シャオアイとルー・クーが映画を観たあと、雨宿りしながら話す場面も気に入っています。僕もそんなデートをしてみたかったけれど、チャンスがなかった。映画を通して、そんな高校時代の後悔を埋め合わせたかったんです(笑)。
女子校に通っていた当時のリーウェンにとっても、塾は「男子と会える唯一の機会」だったという。「こっそりと男子の様子をうかがう感覚も脚本に生かしたつもり」と話す。
フレッシュな台湾映画の新鋭たち
当時の記憶と思いが詰まった物語を彩るのは、台湾映画・ドラマ界の今をときめく俳優たちだ。シャオアイ役のチェン・イェンフェイ(陳妍霏)は、『無聲 The Silent Forest』(2020)で“台湾アカデミー賞”こと第57回金馬奨の最優秀新人俳優賞に輝き、日台合作『青春18×2 君へと続く道』(2024)など話題作に出演。今後もいくつもの出演作が待機している。
ミンミン役のシャン・ジエルー(項婕如)も、『愛という名の悪夢』(2024)で第26回台北映画祭の主演女優賞候補となった新鋭で、『疫起/エピデミック』(2023)など多数の作品に出演。イェンフェイとジエルー、フレッシュな化学反応も大きな見どころだ。
ジンシェン監督とリーウェンは、脚本の執筆段階でイェンフェイとジエルーをそれぞれの役柄にイメージしていたという。オーディションでは多くの若手俳優たちと面会したが、やはりふたりが主役に適任と判断した。「演技テストで実際に共演してもらった時も、一番の相乗効果だった」と監督は振り返る。


