いま、90年代の台湾を映画にすること

 この物語を生み出したフイファンは、90年代を「恋愛の曖昧さが残っていた最後の時代」と呼ぶ。

フイファン 青春を描くときは、やはり恋愛が大きなテーマのひとつです。インターネットが普及しておらず、SNSもなかった90年代は、恋愛をするにも時間がかかっていたし、お互いに誤解や想像の余地があった。現代の恋愛はInstagramで恋に落ち、Instagramで別れるというスピード感ですが、当時の恋愛はゆったりとしたスピードと誤解、想像が魅力だったと思います。

 また、監督はこの映画が描いた1990年代後半を「台湾にとって特別な時代」と語る。

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ジンシェン監督 ミレニアムを控えた緊張感と期待、伝統的な社会からデジタル社会への移行。台湾では政治の民主化が進み、初めての総統直接選挙もありました。2000年以降には政権与党が国民党から民進党に交代するなど、まさしく変化とチャンスに満ちた時代だったのです。

 時代が進むスピードはあまりにも速い。だからこそ、台湾の90年代は「今こそ書き残しておく、映画として描く価値のある時代」なのだと強調する。「きちんとこだわり抜きたい、想像をめぐらせつづけたいと思える時代」と。

 

『ひとつの机、ふたつの制服』
監督:ジュアン・ジンシェン/脚本:シュー・フイファン、ワン・リーウェン/出演:チェン・イェンフェイ、シャン・ジエルー、チウ・イータイ/2024/台湾/109分/配給:ムヴィオラ、マクザム/Renaissance Films Limited ©2024 All Rights Reserved./公開中

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