青春時代の甘酸っぱさ、学歴社会の傷
監督のジュアン・ジンシェン(荘景燊)と、公私にわたるパートナーである脚本家ワン・リーウェン(王莉雯)は、ともにフイファンと同世代。90年代の台北で、ジンシェン監督は男子校に、リーウェンは女子校に通っていた。受け取った脚本を読み、ふたりは思わず涙を流すほど心打たれたという。
ジュアン・ジンシェン監督(以下、ジンシェン監督) 脚本を読みながら、そこに描かれている高校生の感情を鮮やかに思い出しました。青春時代の甘酸っぱさとほろ苦さ、あのころ経験した大学受験の苦しみが心に染み渡っていくようで、この脚本を絶対に映画化したいと思いました。今の台湾で映画を撮ることは資金面でも大変ですが、困難を乗り越えて撮るべきだと感じたのです。
ワン・リーウェン(以下、リーウェン) 私とフイファンはほぼ同い年で、ともに女子校出身です。中高6年間を過ごすなかで、女子同士の友情はとても大切なもの。私も名門校に通っていましたが、成績が悪かったので、シャオアイの“頑張っているのに評価されない”という気持ちはよくわかる。脚本を読み、女子学生たちの気持ちにとても共感しました。
3人が共有しているのは、当時の台湾にあった厳しい学歴社会と、“たった一度の試験で人生が決まる”と言われるほど大きなプレッシャーがかかった大学受験の記憶だ。「脚本家ふたりが、当時の高校生活のつらさをきっちりと書き込んでくれた」と監督は称える。
「成績至上主義、あるいは学歴主義の傷が、この脚本に大きな影響を与えました」とフイファンは言う。成績を基準にクラスが分けられたこと、体罰が当たり前に行われており、テストで悪い成績を取ると教師から理不尽に叩かれたこと。そして、学力以外の才能が不当に軽んじられたこと。
フイファン 芸術の才能がある、いい作文を書ける、運動ができる……それらすべてがどうでもいいものとして扱われるなかで、自尊心を失うことは簡単でした。一度だけ短い演劇を上演する機会があり、私が脚本を書き、みんなで練習しましたが、結局はやりたいと思えなくなってしまったんです。当時は成績がとても悪かったので、たとえ演劇で輝くことができても授業の時間になるとまた叩かれてしまう。あまりにみじめな気持ちでした。

