事実が曖昧なまま判断せざるを得ない
――K氏は本作のプロデューサーであり俳優として出演もしています。
小島 彼は前作の『JOINT』のオーディションに来てくれて知り合いました。ぴったりの役柄があってキャスティングしたところ、撮影をしていくうちに、彼がキャストとしてだけでなく製作側としても参加してくれて、後半の撮影はすごく手伝ってもらいました。それで『JOINT』ではエグゼクティブプロデューサーという肩書きにさせてもらい、次の作品も一緒にやろうとなったのです。
成 Kさんと私はもともと知り合いだったんです。私が配給作品を探している中で、出演者の1人から勧められて『JOINT』を観たらすごく面白かった。そこに彼が出演していたわけです。
彼が逮捕された後、面会に行って事情も聞きました。ただ、現場を見たわけではないし、Kさんの主張とはまた違う見方を相手側はしているかもしれない。とにかく当事者同士でちゃんと和解できたらいいんじゃないかな、と彼にも言いましたし、本人もそれを望んでいました。どう判断するにせよ、まだ情報が足りない状況で、やきもきしていました。
――その後、この件が報道され、同じタイミングでK氏も起訴となりました。それから数日後に公開を延期するという判断をされます。その時点ではまだ事実が曖昧なまま、そうせざるを得なかったということでしょうか。
成 そうです。彼が起訴されて法廷で裁かれることになったわけですが、判決が出るのはだいぶ先になってしまう。しかし起訴されたということは、重く考えなければいけないなと。それで、配給を協力してくれることになっていた会社や、上映を予定していた映画館に共有して、協議を始めました。その結果、配給協力会社からは「社内判断としてこの状態だとできない」という回答をもらいました。コンプライアンス規定など、総合的な判断だと思います。
そこでうち一社で公開に踏み切るか、一旦延期するかの判断をしなければいけなくなりました。そのときが一番悩みました。監督とも色々相談しました。
