事件を受けて作品をいじるのは理屈に合わない

――延期によって、どのくらいの損害が発生したのでしょうか。

 それは一口で言うには難しいです。そこまでかけてきた労力とか費用が一旦ストップするわけですから、ビジネス的損失としてのインパクトが大きかった、とだけ。映画は何年もかけて進めるプロジェクトですし、いつリターンが得られるか見えなくなるのも大きな不安です。

 あらためて公開を決める前提としては、裁判が終結することが最大の条件だと思っていました。それによって事実が認定されれば、そこから説明のしようもあるはずですから。

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――報道では割った瓶を足に刺して、といった凄惨な行為が報じられていました。

 判決ではそういった事実はなかったとされています。もし故意に刺していたら、おそらく実刑になっていたでしょう。裁判の結果を聞いて報道の記事は事実と異なる部分が多いと感じました。ただ、傷害という事実はあるから、執行猶予がついた有罪となったのだと思います。

――執行猶予付きの有罪判決確定を受けて、公開に向けて動き出され、8月には声明を発表されました。オリジナルのまま、K氏のクレジットや出演シーンなどもそのままの形で公開することを決められました。

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小島 作品を撮影・編集して全てが完璧になった数カ月後に事件が起きているので、作る過程とは全く関係ないことです。逆に、事件を受けて作品をいじるのは、理屈が合わないと思います。仮に彼の出演シーンを少々カットしたところで、その行為自体が事件に対する反応になってしまう。僕からわざわざ作品に事件を影響させているような、変な関係性になってしまうんです。もちろん主演なのか、どれくらいのシーン数かといったことを総合的に判断して、オリジナルのままでも作品と事件の距離は保たれていると考えました。

 彼が作品の制作に参加し、貢献したことは事実ですし、それも含めて作品だと思いますから、その先で起きたことで作品をいじるという考えはあまりなかったです。