トラックに乗って留置所に運ばれ…
――絶望的ですね……。
ムン 牧師さんと他の脱北者と一緒にトラックに乗って留置所に運ばれました。この場所で捕まって解放された人はいないんですよ。北朝鮮に戻されたら家族の命が危ないと心配で……。留置所に入ってから「私が死ねば家族や親族は助かるはず」と何度も自殺を考えました。
結局、眠れずに朝になって。そしたら警察の人がやってきて、牧師さんと一緒に食事に呼ばれたんですけど、喉を通りません。食事の後に別の部屋に通された時、警察が「これはダメだよ」と偽造した身分証を指差したんですが……。押収したお金やネックレスを目の前に出すんですよね。
そして、「早く出ていって」と中国語で言いました。
「えっ?」と思ったんですけど、聞き間違いじゃなかったみたい。牧師さんと一緒に急いで留置所を出たら車が待っていてくれたんですよ。理由はわからないです。牧師さんもびっくりしていました。一緒に捕まった脱北者も釈放されていました。奇跡ですよね。
――中国からラオスに渡る時は国境を渡りますよね。
ムン 国際バスに乗ってラオスに向かいました。このバスの運転手は、私たちが北朝鮮人だと知っていて。検問を受けてもバレないような荷物置き場みたいなスペースにかくまってくれました。移動は5時間くらい。ガソリンの臭いと土ぼこりにまみれながらラオスに到着。別のルートで移動していた牧師さんと合流して韓国大使館に入りました。大使館には150人も脱北者がいたんですよ。
「こんなにいっぱい同志がいたんだ!」とびっくりしました。毎日のように新しい脱北者も入ってきましたよ。
――脱北してからラオスの韓国大使館に着くまでどのくらいの時間がかかったんですか。
ムン 4ヶ月です。数日後の夜に韓国行きの飛行機に乗ったんですけど、北朝鮮に行かないか不安で(笑)、まったく眠れませんでした。
着陸前に窓から外を眺めると、街の電気がピカピカと輝いていて。「北朝鮮じゃない!」とようやく安心できました。
