千葉市稲毛区で行列のできる平壌冷麺店「ソルヌン」を夫婦で営むムン・ヨンヒ(34)さん。北朝鮮のエリート階級出身だった彼女は25歳の時にひとりで脱北を果たした。
その後、家族も脱北に成功し、韓国で暮らし始める。韓国で生活を送っていた彼女はなぜ日本で冷麺店を開いたのだろうか。日本人の勝又成さんと結婚した背景も含めて話を聞いた。(全4回の4回目/最初から読む)
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韓国での平壌冷麺の流行を見て「これならいけそう!」と…
――お母さんと弟さんと韓国で合流してからどのような生活を送っていたのでしょうか。
ムン・ヨンヒ(以下、ムン) 私は税理士の資格を取って、出版社で経理の仕事をしていました。
お母さんは北朝鮮で料理人をしていたから韓国の飲食店でアルバイトを始めました。弟は大学を卒業していないですけど、英語が得意だったんですよ。韓国で3ヶ月ほど勉強してフィリピンに留学に行ったんです。オーストラリアにも留学して英語がペラペラになりました。
――精力的ですね。
ムン 10年も20年もスタートが遅れてしまっているから「たくさん走って追いつこう!」という気持ちでした。
――ソウルで平壌冷麺店を開いたのはいつだったんですか。
ムン お母さんが脱北した2年後の2019年です。飲食店の代表をしていたお母さんは自分のお店を持ちたいと思っていたんです。私も一緒に働きたかったので自分たちのお店を開業しました。
――なぜ冷麺店だったんですか。
ムン 北朝鮮では飲食店や衣料品店、スポーツジムが一緒になった複合的な施設が流行っていたから、それをやりたいと思っていたけど、韓国では専門店ばかり。
「どんな店舗にしようかな」と悩んでいた時に韓国で「平壌冷麺」が有名なことに気づいたんです。
お母さんは高麗ホテルの一角で料理人をしていて、本場の平壌冷麺を作れるので「いけるかも!」と思って、親戚にお金を借りてソウルにソルヌンの本店をオープンしたんです。

