人生を暗転させた「新型コロナ」

「2019年の下期に異動で城南地域の支店に移りまして。半年は特に問題なく過ごせていたのですが、年が明けて2020年になったら新型コロナの流行で暗転してしまったんです」

 行動制限が掛かったため、頻繁に顧客回りして預金を獲得することができない。

 そのうえ前年に「問題なし」と判定して融資した会社の状況が悪化し、返済の延期や猶予を求められる事案が頻発した。

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「信用金庫だから顧客は中小企業、個人商店の割合が高い。体力のないところが多いから大変でした」

 特に飲食店関係の落ち込みは尋常ではなかった。

「役所からの通達で、入店人数は定員の半分まで、夜8時には閉店、お酒の提供は不可と言われ、売上が7割以上落ちたというお店が何十軒とありました」

 経営者からどうしたらいいのかと相談されても答えようがない。

「役所の通達なんて無視しろ。普通に商売して儲けろとは言えませんでしょ」

 自分が決裁した融資先が自己破産したこともあり、副支店長や支店長から「不味いよ、君」と言われることがあって心労が増えていった。

「自分の性格も周囲の評価を気にする方でして。それも良くなかったと思います」

 眠りの浅い日、気分が優れない日、食欲がまったく湧かない日が3か月近く続いたが表面上は何ともないと取り繕っていた。

「体重が5kg以上減りましたね。夜に眠れないので昼食後に睡魔に襲われる。帰りの電車で座ったら最寄り駅に着いても立ち上がれないことがありました」

写真はイメージ ©getty

 明らかな異変を自覚したのは調子が悪くなって5か月ぐらい経ったとき。

「始業前に部署の者たちと連絡事項の確認をしたり、訪問予定を伝えたりするのですが突然、言葉が出なくなってしまいました」

 このときは適当にその場を取り繕ったが状況は更に悪化していく。

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