『プレデター:バッドランド』
これまでのシリーズ作品で、圧倒的な強さで人類に対する「狩り」を敢行してきたプレデター。最新作となる本作では、どんな狩りが行なわれるのか――とワクワクしながら観たのだが、待ち受けていたのは驚愕の連続だった。
最初の驚きは、本作には人類は表立っては出てこないことだ。プレデターの狩りの対象となるのは「バッドランド」と呼ばれる惑星。そこは、凶暴な巨大生物を中心に植物すらも攻撃的な、徹底した弱肉強食の世界だ。プレデターはこの星の巨大生物を狩るためにやってくる。
しかもこのプレデター、まだ若く、精神的にも戦闘的にも未熟なため、この星にあっては決して「圧倒的な強者」ではないというのも驚きのポイントだ。そんなプレデターを助けるのが、人類の作ったアンドロイド=ティア(エル・ファニング)。下半身を破壊された彼女を背負い、その知識や洞察の力を借りてプレデターは危機を乗り越えていく。これに道中で加わった可愛らしい小動物のトリオは、いつしか仲間としての温かい関係性を育んでいく。
プレデターなのにホッコリ。これまた驚きだ。
そして後半は、残虐なアンドロイド=テッサ(エル・ファニングの二役)の率いる戦闘アンドロイド軍団も交えた戦闘になっていくのだが、戦いを通してプレデターがヒューマニズムや多様性に目覚め、生命を尊ぶようになっていく展開に、何より驚く。
だからといって、最近のハリウッド映画にありがちな倫理観に凝り固まった説教臭い映画にはなっていない。危機の連続を切り抜けていくアクション、肉弾戦を核とした戦闘、そして終盤にはランボーのような武装を始めるプレデター、思わぬ活躍を見せるティアの下半身――。アクションはいずれもアイデアと迫力に満ちており、飽きがこない。二役を巧みに演じ分けるエル・ファニングも魅力的で、特に知的で可憐なティア役の芝居はたまらなくキュートだった。
「こんなのプレデターじゃない!」とお嘆きになる方もいるかもしれないが、一本のアクション映画として接すると、とても見応えがある。
『プレデター:バッドランド』
監督:ダン・トラクテンバーグ/出演:エル・ファニング/2025年/アメリカ/107分/配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン/©2025 20th Century Studios. All Rights Reserved./公開中
