「トランプ大統領の弱点を巧みに捉えた」

 2紙の記事本文は「就任して1週間も経たないうちに高市早苗氏はゴルフ、ゴールド、ディール(注:レアアース取引)、そしてノーベル平和賞といったトランプ大統領の弱点を巧みに捉えた魅力的な攻勢で、アジアにおけるトランプ大統領の最大の同盟者となる態勢を整えた」、「日米関係の新たな『黄金時代』の幕開けをアピールし、トランプ大統領の金ぴかの美学への傾倒に訴えた」、「東京のゴールドで満たされた宮殿(注:迎賓館赤坂離宮)」、「金色のペンで『JAPAN IS BACK』と書かれた野球帽にサイン」など、トランプのゴールド趣味と、それに合わせる高市首相への若干の皮肉を込めた記述となっている。

トランプ大統領とワールドシリーズを観戦(ホワイトハウスのXより)

 記事中、ノーベル平和賞の推薦と並ぶその他のもてなしとしては、「昼食にはアメリカ産牛肉とともにアメリカ産米が出された」、「安倍氏所有のパターをトランプ大統領に贈呈」、「東京タワー、東京スカイツリー、東京都庁が赤・白・青のライトアップで歓迎の意」、来年7月4日の米国建国250周年に向けて「250本の桜の木」と「記念式典に花火」の提供が挙げられている。

アメリカでの高市首相の認知度は…

 今回の訪日により、アメリカのメディアもトランプ大統領と高市首相のツーショット場面を報じたが、今のところアメリカでの高市首相の知名度は政治に関心の高い層以外では限られたものとなっている。

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大統領専用ヘリコプター「マリーンワン」内でのツーショット(高市氏のXより)

 10月21日に高市首相が第104代内閣総理大臣に選ばれると、ニューヨーク・タイムスは『日本は新リーダーを迎えた、彼女はヘビーメタル・ドラマーだ』と題した、高市首相の詳細な人物紹介の長文記事を掲載した。高市首相をまったく、もしくはほとんど知らない読者に向けた内容だった。

 奈良県の地方都市の保守的な家庭出身であることから、女性として大学進学にすら苦労があったことに始まり、「ヘビーメタルとカワサキのバイクが好き」など、経歴だけでなく人となりを詳しく報じている。

かつてバンドでドラムを担当し、ヘビーメタルなどロック好きで知られる高市氏(高市早苗公式サイトより)

 その政治思想については「(故)安倍晋三首相の愛弟子である高市氏は、トランプ氏のMAGA(=熱心なトランプ派)運動と類似点を持つ最近のポピュリズムの波に呼応し、日本をさらに右傾化させると期待されている」としている。

 しかし、「1980年代後半(中略)コロラド州選出の民主党下院議員で熱心なフェミニストであったパトリシア・シュローダー氏の事務所でのインターンシップを得た」が、「当時、防衛や社会問題に関する彼女の保守的な見解は全く見られなかった」とも書かれている。