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2024年10月15日。この日公示された第50回衆院選は、林氏にとって重要な意味を持つ一戦だった。
「裏金問題で自民に大逆風が吹いていただけではない。林氏にとって、同じ山口が地盤の故・安倍晋三元首相が22年に死去して以降、初めて臨んだ衆院選でした」(地元記者)
10増10減の区割り変更で、山口県内の選挙区が4から3に減少。安倍氏が地盤とした旧4区の下関市、長門市が林氏の新3区に編入され、集票力が試された。そして結果は約11万5000票を得て再選。約7割の得票率に達したのだった。
「週刊文春」は今回この昨秋の衆院選をめぐる、林氏陣営の「選挙運動費用収支報告書」を情報開示請求で入手。その内容を精査した。
膨大な「労務費」
まず目につくのは膨大な「労務費」だ。
「選挙運動は資金力の差が結果に影響しないように自発的、かつ無報酬で行うのが原則です。そのため、公選法上報酬の支払いができる先は極めて限定的。ウグイス嬢や手話通訳者に法定で例外的に支払い可能であるほかは、裁量性のない機械的な“単純労務”に限られる。例えば公示日のポスター貼り、ハガキの宛名書きです」(山口県選管)
この単純労務への報酬が今回の焦点になる「労務費」である。
「上限は1日1万円。ただし、単純労務以外を行っていれば、違法性が問われます。それもあって近年は労務費をむやみに支出せず、ポスター貼りなども原則通りボランティアで支援者に依頼するのが一般的です」(前出・政治部デスク)
にも関わらず、林氏の「労務費」の支出は異様な規模だ。先の総裁選候補者と比べてみると、昨年の衆院選に出馬した高市総理、小泉防衛相、茂木敏充外相は、ウグイス嬢など法定を除く労務費の支払いはゼロ円。一方、林陣営は計269人(業者1社含む)に計約316万円の労務費を支払っている。
奇妙な「ポスター維持管理費」
リストによれば、支出を受けたのは主に選挙区の住民たち。1万円や5000円などと金額にばらつきがあるが、269人が従事した「労務」とは一体何か。
