まずは気軽に便潜血検査から始めるのがよい
また、「2回できずに1回の検査になってしまった」という方もいます。
もちろん便秘などの理由で便が出ずに、つい同じ便から2回分を採取してしまう方もいるでしょう。しかし、それではせっかくの便潜血検査の効果を十分に発揮することはできません。「1回法」よりも「2回法」の方が当然、精度は高いので、何とか頑張って2回、便を出したいところです。
また、読者の中には「大腸がんをスクリーニングするのであれば、便潜血検査よりも、最初から大腸内視鏡検査を受けた方がよいのではないか」と疑問を持たれる方もいるかもしれません。
たしかに一理あります。例えば前述の14年間の追跡調査では、追跡開始時に大腸内視鏡検査を受けた人は、受けなかった人に比べて、大腸がんによる死亡リスクが69%も低下しており、数字だけを見れば、便潜血検査による44%低下よりも優れています。
しかし、大腸内視鏡検査は大量の下剤を飲まないといけない上に、大腸カメラを肛門から入れることへの抵抗感、心理的ハードルが高いのも事実です。検査料も6000~1万5000円ほどで、かなり高額です。
そのため、まずは気軽に便潜血検査から始めるのがよいでしょう。
ただし、大腸がんの家族歴がある方や、普段から肉食中心で脂っこい食事が多い方などは、大腸がんのリスクが高いので、大腸内視鏡も検討するとよいでしょう。
伊藤大介(いとう・だいすけ)
1984年、岐阜県生まれ。東京大学医学部卒業後、同大医学部外科博士課程修了。肝胆膵の外科医を経て、その後、内科医・皮膚科医に転身。日本赤十字医療センターや公立昭和病院などを経て、2020年に一之江駅前ひまわり医院院長に就任。1日に約150人、年間3万人以上の患者を診察する。日本プライマリ・ケア連合学会認定医、同指導医、日本病院総合診療医学会認定医、マンモグラフィ読影医。2025年に日本外科学会優秀論文賞を受賞。
