そんな彼の夢はアメリカ海軍に入隊すること。軍に入れば、貧しい暮らしから抜け出せ、周囲の評価も変わるものと信じていた。しかし、左腕に「USN(USネイビー)」のタトゥーを彫り、やる気満々で入隊試験を受けたものの、健康診断をクリアできず不合格に。厳しい現実を突きつけられた結果、不良性がエスカレートし、17歳のときにはレンタカーを返却しなかったことで初逮捕。
ボニーとクライドの「運命的な出会い」
18歳で七面鳥を盗み、またも逮捕される。いったん、まともな仕事に就いたものの長続きせず、その後は金庫破り、強盗、自動車窃盗など悪の道を突き進むことになる。
ボニーとクライドが運命的な出会いを果たすのは1930年1月のこと。腕に怪我をしウェイトレスの仕事を休んだその日、ボニーは友人女性の家でお茶を楽しんでいた。そこに、偶然、友人女性の知り合いだったクライドが訪ねてくる。ここでボニーがクライドに一目惚れ。彼女の熱烈なアタックにより、交際が始まる。ボニー19歳、クライド20歳のときだ。
前述したように、クライドはこの時点で二度の逮捕歴があり、街の荒くれ者として名を馳せていた。一方、ボニーは犯罪とは無縁の女性。そんな彼女がなぜクライドに惚れたのかはわからないが、退屈な日々に飽き飽きとし刺激を求めていたボニーにとって、危険な匂いをまとったクライドは魅力にみちみちていたようだ。
付き合って3ヶ月後の1930年4月、クライドは自動車泥棒の罪で逮捕され、テキサス州のイーストハム刑務所に送られる。同刑務所は広い敷地に農場を擁し、囚人たちはそこで過酷な農作業を強いられていた。クライドはこれに耐えられず、収監後まもなく脱獄を計画。ボニーが密かに差し入れた武器を使いまんまと塀の外に逃げるが、数日も経たぬうちに捕まり、今度は懲役14年の刑で刑務所に戻される。
そこで彼を待っていたのは地獄の日々だった。脱獄に失敗したことによりいじめの対象となり、囚人たちに性的暴行を受け続けたのだ。当初は我慢して屈辱に耐えていたものの、限界に達するまでに時間はかからず、自分を襲ってきた囚人を鉄パイプで滅多打ちにし撲殺してしまう。
しかし、この殺人は正当防衛とみなされ、特に咎められることはなかった。こうして囚人の性奴隷から解放されたクライドだが、皮肉なことに、この体験により彼は男性にも興味を持つバイセクシュアルになってしまう。さらに、クライドは日々課される過酷な農作業から逃れるため、作業用の斧で自ら左足の指2本を切断。精神が極めて不安定な状態と判断され、故意の自傷から6日後の1932年2月2日、仮釈放となる。
ある意味、思惑どおりの結果だったが、この行為により彼は生涯足を引きずって歩くことになり、またイーストハム刑務所での体験はそれまで陽気だったクライドの性格を陰鬱なものに一変させてしまう。
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