1930年代の米国で“義賊カップル”として名を馳せたボニーとクライド。銀行を襲い、警官9人と民間人4人を殺害しながら逃亡を続けた2人の最期とは――。文庫『世界の殺人カップル』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全3回の3回目/最初から読む

大量の弾丸を打ち込まれたボニー&クライドの車 ©getty

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警官9人、民間人4人を殺害

 1934年5月23日午前9時過ぎ、ボニーとクライドは、ルイジアナ州ビヤンウィル郡アーケディアの154号線を愛車のフォードV8で南下していた。行き先は新たに仲間に加わったヘンリーの自宅。そこでしばらく匿ってもらう約束になっていたのだ。ハンドルを握るクライドの隣には、助手席でサンドウィッチをほおばるボニー。まるで、つかの間のドライブを楽しんでいるかのようだった。

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 ちなみに、この時点で2人は少なくとも警官9人、民間人4人を殺害していた。

 目的地が近づいてきた道すがら、2人は路肩にトラックを止め立ち往生しているヘンリーの父親に遭遇する。クライドが車を停車させ、父親に歩み寄り事情を聞いたところ、なんでも、タイヤがパンクしたのだという。修理用の工具を車に積んでいないか? クライドが尋ねると、なぜかヘンリーの父親が荷台の下に身を隠した。その瞬間、茂みの中から6人の警官が姿を現し、クライドに向け一斉に発砲。頭部を撃ち抜かれた彼は即死する。

 悲鳴を上げるボニーにお構いなく、警察は続いて彼女が乗るフォードV8にも銃弾を撃ち込む。果たして、ボニーは車ごと蜂の巣となり、9時15分ごろ、2人の死亡が確認された。

 彼らに向け放たれた130発以上の銃弾はクライドに17ヶ所、ボニーに26ヶ所命中し、フォードV8には112個の弾痕、事切れたボニーの手には食べかけのサンドウィッチが握られていた。

 この殺害劇は言うまでもなく仕組まれたものだ。