しかし実は地中深くのゴミなど確認されていなかった。2017年2月、値引き発覚直後に行われた財務局と大阪航空局の打合せ記録が10月に開示されて明らかになる。
《9.9mの深度に埋設物があったのかは、視認していない》
さらに10月、問題の国有地で大阪航空局が去年からボーリング調査を行った結果、地中のゴミは値引き時の想定の4分の1しかないという報告書が公表された。値引きの正当性は根底から崩れた。
財務省の主張を覆す新事実が明らかになっている
新事実を記した“極秘資料”の存在は、亡くなった赤木俊夫さんの妻、赤木雅子さんの開示請求により初めて明るみに出た。雅子さんは11月4日、高市首相の事務所に手紙を届け、第三者による再調査を求めた。
『高市総理が〈自民党〉総裁選で語った「公平で公正な日本を実現」するためにも、総理の決断で〈再調査を〉実現してください』
『夫が亡くなったのは三月七日。高市総理のお誕生日と同じというのもご縁を感じます。どうぞよろしくお願いいたします』
この手紙が11月10日の衆議院予算委員会で取り上げられた。立憲民主党の川内博史議員は、俊夫さんの遺品のネクタイを締めて質問に臨んだ。高市首相は手紙を読んだと明かし、「ご遺族のお気持ちについてはしっかりと受け止めさせていただきました」と答えた。さらに川内議員は、大阪航空局の調査でゴミの量が大幅に少なかった事実も手紙にあると指摘。首相が参議院で「新たな事実は判明していない」と答弁したことと矛盾するとして、「新たな事実であるということは認めますね」と迫った。すると高市首相は、
「埋設物の量が違っていたということは公表されたということです」
遠回しながら新事実であることをようやく認めたが、
「私は第三者による再調査が改めて必要だとは考えていない」
と、再調査が必要な状況ではないと拒んだ。財務省も「取引は正当だった」という主張を崩していない。だが、その主張が通らないことはもはや明白だ。高市首相と片山財務大臣は、いつまで“苦しい言い訳”を重ねて再調査を拒否し続けるのだろうか?
(あいざわふゆき/1962年生まれ。東大法学部卒、87年NHK入局。2018年、森友事件で記者職を解かれNHKを退職。著書に『メディアの闇 「安倍官邸 VS.NHK」森友取材全真相』(文春文庫)、赤木雅子さんとの共著『私は真実が知りたい 夫が遺書で告発「森友」改ざんはなぜ?』(文藝春秋)など。)


