総工費は、一般的な葬儀場の「倍以上」
――ご友人の話もありつつ、現在のようなホールの構想はいつ頃から立ち上がったのでしょうか。
関根 何となくは、コロナ禍の時ですね。当時は葬儀に集まることが難しく、オンライン葬儀が生まれましたが、見えるのはお坊さんの後ろ姿ばかりで「画」がつまらないなと課題を感じていました。
――葬儀だけでなく、配信やライブもできる施設というのは聞いたことがありません。
関根 日本どころか世界初かもしれませんね。こういう施設は、見聞きしたことがありません。そもそも、このホールはコンビニ跡地で住宅地のど真ん中にあるもんで、普通に建設しただけだと、どうしても木魚の音が外に漏れてしまう。そこで、防音をちゃんとしようと思ったんです。
それで、防音工事の設計をしてみると、あと数センチの厚みを出せば、もっと大きな音を出せることに気づき、どうせならこだわってみようと。うちほど防音設備が整っている施設はないと思いますよ。工事のコストが跳ね上がりますから。一般的な葬儀場の建設費用が5000万円前後と言われているので、倍以上はかかっています。
それで最終的には総工費1億3000万円をかけて現在のホールを建設し、2022年10月からテスト運用としてライブや配信を始めています。
――総工費に1億3000万かかったというのは伊達じゃないですね。資金調達はどうされたんですか?
関根 ちょうどコロナのタイミングで「事業再構築補助金」があり、費用の半分をまかなえました。当時は葬儀業界だけでなく、音楽業界も打撃を受けたじゃないですか。私は「音楽と生死は繋がっている」という考えなので、両業界を支える拠点をひとつに融合させたいなと思ったのが良かったのかもしれません。
葬儀で必要な防音工事がそのままライブへの転用に適していましたし、コロナ禍でオンライン葬儀や、配信型式場への関心が高まっていたことも後押しになりました。
――普通の葬儀場を作る選択肢はなかったんですか?
関根 なかったです。ホールがあるさいたま市の岩槻は、言ってしまえば“田舎”ですし、住宅街なのもあって、5000万円かけて一般的な葬儀場を作るだけだと反対が起きそうだなと。どうせお金を使うなら、自分も含めてワクワクするものの方がいいと考えたんです。

