フジテレビやシルク・ドゥ・ソレイユ関係者が企画に携わった

――建設には、錚々たるメンバーが携わったそうですね。

関根 オンライン葬儀の映像をどう工夫するか考えた時、テレビ局が作るような映像を配信したいと考えたんです。具体的には、故人様の人生や生き様を映像で流し、後ろでは生のお経が流れているような配信をできればと。

 それを実現するために、細いツテをたどって、なんとかフジテレビなどの美術制作を請け負うフジアール社とつながりました。そこからさらに偶然が重なり、コロナ禍で公演ができずにいたシルク・ドゥ・ソレイユの日本チームともつながりが持てて、照明の設置などに協力してもらいました。

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ライブなどを行うときの仕様バージョン。音響や映像演出にとにかくこだわったという

――コロナ禍だからこそ集まったわけですね。

関根 よくこれだけのスキルや実績をもつモノ好きが集まったと思いますよ。今もう1回やれと言われても、たぶん無理ですね。

――設備面で特にこだわった点はありますか?

関根 収容人数が着席で30人と、ライブをやるには少し寂しい規模ではあるので、何か変わったことをやらないといけないなと思い、視聴者がスマホで好きなカメラアングルを選ぶことができる仕組みを導入しました。

 大手テレビ局を中心に活動しているフリーのカメラマンチームがその仕組みを作ってくれて、例えば好きなギタリストをずっと追いかけるカメラの権利を買って、その人だけを見続けられる。アイドル好きなら、推しがカメラに向かってレスを送ってくれる。それが価値になるんじゃないかと。

楽器を置いたときのイメージ

――3年弱のテスト稼働を経て、2025年6月から本格稼働を開始されました。状況はいかがですか。

関根 正直に言うと、想定より予約が埋まっていません。話はいっぱい来るんですけどね。普通のライブハウスと違い、背面に映像を出力できるので、できる事が多い分、演者さんたちのやることも増えてしまうのがハードルになっているみたいです。

すでにいくつもライブでの利用があったものの、稼働はいま一つな状況だと関根さんは話す

――稼働や利益を高めていくための施策は何かお考えですか?

関根 仕組み作りを進めていこうと考えています。例えば、クラウドファンディングで「このアーティストが出ます。みんなで応援してください」と打ち出して、20万円が集まったらライブを開催、30万円集まれば特殊な音響にするなど、推し活と掛け合わせてライブのグレードが上がるような仕組みを作りたいですね。

――バンド以外での活用事例もあるのでしょうか。

関根 アーティストはもちろん、ステージの背景に映像を投影して変えられるので、コントもおもしろいと思います。

 NGなのは怪談だけですね。葬儀場ですし、怖い画も撮れると思うので、おもしろいでしょうけど……さすがに世間の目もありますから。ホールの外観も葬儀場に見えないようにこだわって作ったので、わざわざ怖い系に寄せる必要はないだろうと社員からも言われています。