さいたま市の住宅街に、通常の葬儀場と比較して2倍超となる総工費1億3000万円をかけて誕生した「ヘビメタのライブができる葬儀場」こと多目的ホール「LIVE THEATER +810 PLUS HEART」がある。

 設計にはフジテレビグループの美術制作会社、照明にはシルク・ドゥ・ソレイユ日本公演チームが参画するなど、葬儀場らしからぬ面々が携わり、3面LEDスクリーン、ジェットエンジンレベルの音量に耐える防音設備、テレビ局並みの配信システムなど錚々たる設備を備えている。

 ホールを手掛けたのは、元バンドマンで2001年に葬儀会社「愛翔葬祭」を立ち上げた関根信行さん(54)だ。異色すぎるホールが誕生した理由や、とくにこだわった設備などについて話を聞いた。(全2回の2回目/前回を読む

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ふだんは葬儀場として、閑散期にはライブ会場に大変身するホールが埼玉県さいたま市にある(写真提供=愛翔葬祭、以下同)

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「日本にはそんな葬儀ができる施設がないし、理解してもらえない」

――なぜ「ヘビメタのライブができる葬儀場」という発想に至ったのでしょうか。

関根信行さん(以下、関根) まず、私自身が音楽好きだったというのが大きいですね。20歳まではプロを目指して、バンドのボーカルとして頑張っていました。ある時「自分には才能がない」と気づいて、一度は諦めたんです。でも、自宅に防音室を作ってしまうくらい、どこか音楽を諦めきれなくて……。

――音楽への思いがあったからこそ、ヘビメタ葬儀場という発想に至ったと。

関根 もう一つ、たまに飲みに行く友人の言葉もきっかけになりました。

「自分の葬式では、Bon Joviの『It's My Life』をかけながら、『これが俺の人生だ』と拍手で送り出してほしい」と力説されたことがあって。それと同時に「でも日本にはそんな葬儀ができる施設がないし、理解してもらえない」と言っていたんです。

 その話を聞いて、私は友人が言っていることは間違ってないと感じました。拍手でワイワイと故人を送り出すような葬儀屋が1社くらいあってもいいじゃないかと。