日本の葬儀費用は世界の中でも高額とされ「小さなお葬式」の調査によれば全国平均は約127万円。一方、この10年で葬儀のミニマム化が進み、大規模なものから家族葬へとトレンドが移り変わる中、低価格で葬儀を執り行いたいニーズが高まっている。

 そんな中「安く葬儀ができる」とアピールする業者も出てきたが、中には最終的に高額となってしまい、トラブルになるケースも少なくない。そもそもなぜ、葬儀費用は高くなってしまうのか。もともとバンドマンとしてプロを目指していた過去があり、埼玉県に「ヘビメタのライブができる葬儀場」を作った“業界の風雲児”、愛翔葬祭の代表、関根信行さん(54)に話を聞いた。(全2回の1回目/続きを読む

愛翔葬祭の代表、関根信行さん。20歳まではプロを目指し、バンド活動をしていた(写真提供=愛翔葬祭、以下同)

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30年前の葬儀業界は「バイオレンスな世界」だった

――一風変わった施設を運営する関根さんですが、葬儀業界にはどんなきっかけで携わるようになったのでしょうか。

関根信行さん(以下、関根) 高卒でイベント会社に就職し、20歳まではボーカルとしてバンド活動をしていました。プロを目指していたのですがその道を諦めて、そのあとは、銀行のオペレーターや探偵など、色々な仕事を経験しています。その中で、25歳の頃に縁があって葬儀会社の下請けとして、遺影写真の編集を手掛けるようになったんです。

 ただ、当時の葬儀業界は横柄な態度の人が多く、下請けというだけでナメられることばかりで……。葬儀の仕事自体のやりがいは感じていたので、「だったら下請けではない形で携わろう」と、25歳の時に葬儀会社へ転職しました。

若かりし頃の関根さん

――実際に働いてみていかがでしたか。

関根 1社目は2年半ほど勤めましたが、今では考えられないくらいにバイオレンスな環境でしたね。上司は気に入らないことがあれば殴る蹴るが当たり前。ホウキを持って追いかけられるわ、祭壇を入れるための5キロくらいの木箱を投げつけられるわで、散々でした。革靴のかかと部分で頭を殴られたこともありますし。

――約30年前とはいえ、ハラスメントどころのレベルじゃないですね……。

関根 「殴り返すより殴られ続けた方が、あとあと有利だ」と思い、しっかりガードして致命傷は負わないようにだけ気をつけて耐えていました。ただある時、本気でぶん殴られたことがあって、さすがに頭にきたので病院で診断書を出してもらい、警察にも届け出を出して「もう二度と会社には行かない」と宣言しました。

 それで数カ月ゴタゴタしたんですが、最終的には会社側と示談が成立して、その時の示談金の半分ぐらいが現在の会社を作る時の“軍資金”になっています。