那珂川の人口が急増したワケ
1960年代から経済成長とともに福岡市の人口が急増し、郊外の農村にも都市化の波が押し寄せる。
さらに1974年に新幹線の車両基地ができると、それをきっかけに宅地化が一気に進展。この時期の那珂川町の人口増加率は県下ナンバーワンだったのだとか。
博多南駅は、そうした人口の増加と周辺の宅地化が後押しする形で開業した駅だ。
路線バスで福岡市の中心部まで通勤するしかなかったこの町の人々にとって、回送列車が行ったり来たりしている車両基地への引き込み線、何が何でも乗りたくてたまらない、そういう存在だったのだろう。
そんなわけで、博多南駅の開業によってなんと博多駅までものの10分という超便利な町になる。これが最後の一押しといったところか。
その後も人口の増加は続き、ベッドタウンとしての形をいよいよ整えていった。そして2015年、ついに那珂川町は人口5万人を突破する。町から市に昇格する条件を、満たしたのである。
ちなみに、那珂川町は2010年の国勢調査でも人口5万人突破を目指していた。しかし、わずか223人足りなかった。
市への昇格のために人口を水増しして町の幹部が逮捕された自治体もあるほど、市になれるかどうかは生命線。権限が増え、それに伴って財政支援も拡大するからだ。
かくして、那珂川町ではあの手この手で人口増加策を展開し、ついに悲願を成就させたのである。
固定資産税相当額を補助するなど、いささか強引さも否めない。が、博多南駅開業時点では1万人に満たなかったのだから、大躍進なのは間違いない。
2018年に市制施行した那珂川市。現時点では、市町村合併ではない単独市制では最も新しいケースである。
そんな町の玄関口・博多南駅。朝夕のラッシュ時は、新幹線が満席になって座れなくなるほどに混雑するという。10分もかからず、九州最大のターミナル・博多駅。
せっかくの新幹線車両も、くつろぐほどの時間はない。が、これだけ便利な町もない。博多南駅、“最も新しい市”のシンボルなのである。
撮影=鼠入昌史
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