『子どもが本当に思っていること』(精神科医さわ 著)日本実業出版社

 著者は児童精神科・心療内科クリニックの診察室で、日々、5歳以上の子どもとその親に向き合っている精神科医。本書には、そんな著者だからこそ知り得た子どもの心の声――子どもが親に対して思っている本音と、それに親はどう応えるべきかがまとめられている。

《もっと認めてほしい》《自分の考えで押さえつけないで》《怒らなくても伝わるから》《なんでもかんでも指示しないでほしい》など、子どもの心の叫びともいえる項目の数々にドキッとさせられつつも、重くなりすぎずに読み進められるのは、著者のキャラクターによるところが大きそうだ。

「著者は医師であると同時に発達障害の2人の娘を育てるシングルマザー。長女の不登校に悩んだり、娘として自分の母親との関係に苦しんだ時期もある。著者にご自身のエピソードをたっぷり書いてくださいとお願いしたところ、そうしたプライベートな部分もオープンに綴ってくださいました。医師が上から物を言うのではなく、医師でありながら自身も悩み苦しみ、試行錯誤を繰り返しながら明るく前を向こうとする姿勢が読者の共感を呼んでいます」(担当編集者の川上聡さん)

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 4人の子を持つ家庭教育系のインフルエンサーが、SNSで「あと3年、早く読みたかった!」と本書を評したことをきっかけに売れ行きが急上昇。また著者がYouTubeやVoicyを通じて地道にファンを増やしたこともヒットの要因になっているという。

「著者が本書でもっとも伝えたかったのは、子どもにとってはお母さんがそばで笑っているだけで嬉しいということ。そしてお母さんが笑っている家庭の方が、子どもが安心できる場所になるということ。といっても父親にとっても学びは多い。たとえば僕には中学生の娘がいますが、本書を編集して以降、子どもの不安と自分の不安を分けて考えるようになりました。子どもが友だちとうまくいっていないと聞いて心配になったとしても、本人がそれほど悩んでいなさそうなら、それは親の不安に過ぎない。あれこれ口を出さず、まずは見守ろうと思えるようになりました」(川上さん)

 今夏、子どもの発達の特性を綴った第2弾『「発達ユニークな子」が思っていること』も発刊。好調な売れ行きを見せているそう。

2024年4月発売。初版4900部。現在13刷6万5000部(電子含む)