「気付いたらポケットに知らない人の手が……」
――単身で、ツテもなく移住したことで、大変だったり危険な目に遭ったりしませんでしたか。
上枝 大きなトラブルはありませんでした。車上荒らしには遭いましたが、友達の車だったので被害もなくて。ちょっと怖かったのはスリですかね。3回ほどトライされて、気付いたらポケットに知らない人の手が入っていたときはゾッとしました。
――移住してから、仕事は順調に決まりましたか。
上枝 スペイン語は話せなかったので、まずは英語で履歴書を作って現地のエージェントに直接営業をかけました。それでいきなり2社が「契約しよう」と連絡をくれたんですけど、でも私の勘違いもあって、最初の1年間はビザの関係で働けなくて。
目の前にチャンスがあるのに、掴めない、あの悔しさは今でも忘れられません。NMB48時代は毎日ステージに立っていたのが、一気にゼロになって、語学学校に通うだけの生活だったので、孤独と不安で毎日泣いていました。
(写真提供=本人)
日本語・英語・スペイン語の3カ国語で発信したTikTok
――生活費はどうしていたんですか?
上枝 最初はNMB48時代の貯金を切り崩して生活していました。あとは、いったん日本に戻ってNMB48の先輩がやっているカフェで働かせてもらったり。現地で友達と食事するときでも「割り勘で足りるかな……」と心配になることが多くて、それも精神的にしんどかったです。
そこから仕事が本格化したのは2019年ごろで、日本人役を探すキャスティングに次々と受かるようになりました。演技力や語学力だけじゃなくて、アイドル時代の経験があるのもウケがいいんですよ。
――ところが、その直後にコロナ禍。仕事がなくなってしまう中、TikTokを始められていますね。
上枝 軽い気持ちで投稿を始めたら、気づけば毎日投稿するようになっちゃいました。日本語・英語・スペイン語の3カ国語で発信していたのが珍しかったみたいで、そこから仕事の幅も広がっていったので始めてよかったです。
――フォロワー約110万人(記事執筆時点、以下同)という数字は、AKB48グループ出身だと小嶋陽菜さん(約60万)、村重杏奈さん(約43万)など名だたるメンバーを押さえて大差の1位です。収益面のインパクトも大きそうですね。
上枝 実は、TikTok自体の収入はほとんどないんです。ライブ配信の投げ銭も試しましたが、自分には合わなくて。広告単価が低めなエリアのフォロワーが多いのも影響しているかもしれません。

