スコアブックをつけながらの野球観戦も楽しい。まず基本は守備位置を数字で表すことから覚える。投手→1、捕手→2、1塁手→3というように。なので、遊ゴロなら「6-3」と書き、飛球の場合、センターフライなら「8」または「8F」と記す。ここまでは野球ファンならほとんど分かっているはず。さらに、1塁を「A」、2塁を「B」、3塁を「C」、本塁を「D」と表す知識を持っていると、かなりの「通」といえる。例えば、一ゴロを1塁手が処理しそのままベースを踏むと「3A」、併殺で遊撃手が自ら2塁ベースを踏み1塁へ送球した場合は「6B-3」というように。まれなケースとしては、満塁のとき捕ゴロを本塁封殺すると「2D」となる。

スコアブックを付けながら観戦の筆者

ライトゴロで思い出した黄金期のプレー

 8月8日、京セラドーム大阪で行われたオリックス対西武の試合で珍しい「9-6」のプレーが生まれた。走者を1塁に置いて、打者の放った打球は右翼手の手前でワンバウンドし、走者のスタートが遅れたのを確認した西武の右翼手・外崎修汰が、2塁ベースカバーに入った遊撃手・源田壮亮に送球しアウトに。要するに「ライトゴロ」という表現になる。時々起こるプレーとしては、中堅手が前進して捕球できるかどうかのタイミングで1塁走者のスタートが遅れ、2塁封殺のケースはあるが、右翼手の補殺はあまり見ない。しかし、走者にとっては難しい判断になるのは間違いない。

絶妙のライトゴロを見せた外崎修汰

 このライトゴロは偶然のものだが、西武の黄金期にはよく「企画」されていたのだ。日本ハム・広瀬哲朗は右打ち巧者で有名。そこで、右翼手の平野謙が「ライナー性のヒットだったら、1塁ベースに付いていて。捕ったらすぐ送球するから」と1塁手の清原和博に事前確認しておくもので、実際に複数回「成功」している。アウトにする側は爽快だが、やられた打者は悔しさが残る。際どいプレーには1塁にヘッドスライディングするのが売りだった広瀬が、腹ばいのままガックリしていたシーンが懐かしい。

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ライトゴロを企画した平野謙(左)と辻発彦監督(その右隣) 右端は筆者 提供/中川充四郎

 また、企画ものとしての「隠し玉」も周囲をあっと言わせる。安打を放って外野から転送されたボールを内野手がグラブにそのまま収め、走者が離塁した時にタッチするもの。ただ、この間に投手がプレートをまたぐとボークになるので、マウンド周辺をうまく歩き回る投手の「演技力」も必要なのだ。西武で見たのは山崎裕之2塁手と片平晋作1塁手の共同作業。山崎の腰に当てたグラブの中のボールを見せながら「晋ちゃ~ん」と声を掛けるのが合図で、1塁走者がスルスルとリードを取った瞬間、送球されアウト。この隠し玉被害の責任は1塁ベースコーチ。なので、新米のベースコーチは常にボールの行方を指で確認しているシーンも見かける。

 ところが、最近はボール交換の頻度が高くなり、外野から内野にボールが返ってきたらすぐにタイムがかかるため、このプレーは「絶滅危惧種」になりつつある。ボール交換といえば、投球が地面につくと捕手が交換を要求する。以前は、打者からの要求が多かったものだが。この交換されたボール、球審によっては汚れをチェックしたのち、その部分を手で払ってボールバッグに入れ再利用されることもある。球審の性格も垣間見える。かつては、1試合に使用されるボールは7~8ダースだったが、現在は10ダース以上にのぼるそうだ。