往年のドラゴンズの主砲で、元日本ハム監督の大島康徳さん(67)の野球解説が「面白すぎる」と評判だ。選手一人一人の特徴や状態を把握したコメントは的確で愛情に溢れ、野球の本当の面白さ、奥深さを伝えてくれる。
大島さんは昨年2月に大腸がんの闘病中であることを告白したものの、「オレを病人扱いするな!」と持ち前の元気を表に出してテレビ解説や中日スポーツ・東京中日スポーツの評論を精力的にこなしている。
そんな大島解説の真骨頂を発揮したのは8月11日、ナゴヤドームで行われた中日×ヤクルト戦だった。ドラゴンズは初回に4点を先制されながら3回に逆転に成功。その後は追いつ追われつの目まぐるしい展開となり、最後は8ー7のルーズベルト・ゲームでヤクルトに白星をさらわれた。その試合を中継したNHKのBS1で放送席に座った大島さん。ここからは、試合終盤の攻防における解説を拾ってみる。
キメの細かい大島さんの“野球眼”
■7回表、ヤクルトが山田哲人の適時打で5ー5の同点に追い付き、なお無死1、2塁。
打席のバレンティンは2ボール1ストライクから佐藤優の直球が甘く入ったにもかかわらず見逃した。
大島「バレンティンは変化球がもう1球来るのではと迷ったのでしょう。でも、そこで変化球を待つのが本当に実力のある打者なんです。バッティングカウントというのは、だいたいどんな打者でも真っ直ぐを狙う。それを配球の読みで変化球を待ったのなら、たいした打者ですよ。あそこで直球を見逃したら捕手が迷う。捕手を迷わせたら勝ちだからね」
この打席、バレンティンはフルカウントから進塁打となる二ゴロ。三振してもおかしくない外角の変化球にうまく合わせた当たりで、大島さんは視聴者の「ど真ん中の直球を見逃したのはなぜ?」の疑問に答えるととともに、豪快な打撃の裏に潜むバレンティンの配球の読みにも切り込んだ。
■7回を岩瀬仁紀の好リリーフで同点止まりにした中日は、その裏に1死3塁の勝ち越し機で平田が打席に入る。
大島「平田は、あれだけ体を開きながら外角の球を打てるのは天才だよね。誰も真似できない。体が開けば外の球は遠くなっていくんだけど、平田はベース板の上にバットをポンと置くような感覚で外角の球を処理していると思うんですよ」
「天才」と称された平田は、外角チェンジアップをとらえて前進守備の三遊間を抜く勝ち越し打。まさにズバリの解説だった。
私が大島さんの野球眼が秀でていると思ったのは、今回がもちろん初めてではない。パブリックビューイングなどのイベントのトークショーでご一緒させていただくと、守っている野手のちょっとした足の動きも見逃さない集中力に何度も驚かされた。