久美さんの売春単価はひとり頭3千円から5千円で、およそ売春の対価として得る金額ではない。いや、その金額で買ってくれるのはまだマシなほうで、多くはたった千円で性行為に及んでいるのだった。

 冒頭で記したようにしゃがんでいると──まるで罰ゲームに興じるように──買う気はないが売値くらいは聞いてみようかといった具合で冷やかし客が興味本位で声をかけてくる。そこで大塚あたりの激安ピンサロの半値を提示されれば、どうなるか。

 その安さから交渉が成立し、公衆トイレや雑居ビルの踊り場でフェラや手コキをするのである。むろん、5千円で買ってくれる常連客もいるにはいると言うが……。

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どうやって暮らしているのか?

 果たして食べていけているのか。暮らしぶりはどうか。やはり女性専用サウナかネットカフェ暮らしを続けているのだろうか。実はパトロンめいた男性がいて、住居だけは確保されているのかもしれない。このまま取材を終わらせても問題ないと思っていたが、まだまだ疑問が湧いてくる。ねえ、久美さん、今日は何を食べたの。どこに帰るの。

「ネットカフェですよ。朝食もそこで提供してくれる無料のもので済ませました」

 某ネットカフェの名前を挙げ、毎日そこに泊まっているという久美さんから受けた僕の印象は、意外にやっていけているんだ、というものだった。

写真はイメージ ©getty

 ネットもテレビも見放題で、タダで飲み物や軽食にもありつける。感想は「ありがち」で、貧困層には違いはないがネット難民と称される若者たちと同様の暮らしぶりが想像され、それほど浮世離れはしていない。が、ネット難民よりさらに苦境に立たされていたことを、僕はあとから知ることになる。

次の記事に続く 「心の病を抱えているのでは」コインロッカーに預けていたものは“ゴミのような荷物”だけ…「3千円で春を売る老女」と共に過ごしてわかった「ある奇行」

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